<墓碑銘2021その1>亡くなった方々の足跡(平和運動、文化)金城雅春さん、有銘政夫さん、大城美佐子さん…


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 戦後76年、沖縄の日本復帰から49年となった2021年。沖縄戦の記憶を後世に継ぎ、復帰運動をけん引し、沖縄の文化や芸能の振興・発展に心血を注いだ人たちが惜しまれながらこの世を去った。(年齢は享年、死亡年月、役職は死去当時、敬称略)

【社会・平和・福祉】

 ハンセン病回復者で、沖縄愛楽園(名護市済井出)の自治会長を務めた金城雅春(67歳、3月8日)は、ハンセン病国家賠償訴訟で沖縄愛楽園原告団長を務めるなど、ハンセン病への差別の歴史を伝えた。

 八重山戦争マラリアを語り継ぐ会会長の潮平正道(88歳、4月18日)は八重山を題材とした創作活動を続けながら、八重山の戦争の実態を語り続けた。

 元ひめゆり学徒で、糸満市にあるひめゆり平和祈念資料館館長も務めた宮良ルリ(94歳、8月12日)は戦後は教職に就き、退職後の1984年から資料館建設に携わり、89年の開館以降は証言員として県内外で戦争体験を伝え続けた。

 「沖縄軍用地違憲訴訟支援県民共闘会議」(違憲共闘会議)の議長を務めた有銘政夫(90歳、10月25日)は小学校教諭を経て、69年に中部地区教職員組合専従役員となり、米統治下の沖縄で日本復帰運動をけん引した。

 在日米軍の動向を追う市民団体「リムピース」編集長の頼和太郎(73歳、12月10日)は当局の発表が限られ、実態の把握しづらい沖縄を含む在日米軍に関する情報を発信した。

 元県軍用地等地主会連合会長の喜友名朝昭(91歳、1月10日)、県女性団体連絡協議会元会長の儀部葉子(89歳、1月21日)、県平和委員会初代会長の比嘉正夫(91歳、3月2日)、白梅学徒隊の語り部の崎山麗子(92歳、5月9日)、県観光ボランティアガイド友の会の元会長の吉嶺全一(88歳、5月12日)、ミーカガン(水中眼鏡)最後の職人と知られた上原謙(78歳、5月18日)、元沖縄県人会兵庫県本部会長の宮城正雄(94歳、5月25日)、「沖縄靖国訴訟」元原告団長の川端光善(85歳、6月20日)、民間の沖縄戦研究家の知念堅亀(87歳、6月23日)、県遺族連合会元会長の座喜味和則(94歳、10月22日)も亡くなった。

【文化・芸能】

 沖縄の民謡歌手の重鎮で、国内外で精力的に活動した大城美佐子(84歳、1月17日)は62年にデビューし、シングル曲「片思い」では「絹糸の声」と評され大ヒットとなった。

 琉球古典音楽野村流保存会会長などを務める琉球古典音楽実演家の勝連繁雄(80歳、7月20日、本名・繁男)は山之口貘賞を受賞した詩人でもあった。国指定重要無形文化財「組踊」や同「琉球舞踊」(いずれも総合認定)の保持者、県指定無形文化財「野村流」の保持者などにも認定された。詩集「火祭り」で2002年に山之口貘賞を受賞した。

 県指定無形文化財「沖縄の空手・古武術」保持者で全沖縄空手道連盟元理事長の上原武信(91歳、3月2日)、元沖縄考古学会会長の嵩元政秀(87歳、4月14日)、山之口貘賞受賞詩人で、演劇集団「創造」の結成に参加した中里友豪(84歳、4月17日、本名・仲里朝豪)、戦後を代表する宮古民謡の歌い手国吉源次(90歳、5月4日)、舞台や映画美術などを幅広く手掛けたデザイナーで版画家の和宇慶文夫(71歳、6月10日)、重要無形文化財「組踊」保持者で琉球古典音楽野村流音楽協会協会師範の新地孝一(70歳、6月24日)、山之口貘賞受賞詩人の宮城英定(83歳、6月11日)、県指定無形文化財「八重山伝統舞踊」保持者で元八重山民俗舞踊保存会長の本盛秀(96歳、7月3日)も永眠した。

【スポーツ】

 県アマチュアボクシング連盟元理事長の仲本盛次(80歳、2月20日)は具志堅用高や平仲信明、上原康恒ら数々の世界王者を育て、沖縄ボクシング界の礎を築いた。
 (仲村良太、知念征尚)