「意見調整の仕組みを」里親制度に課題 識者は子への負担配慮を指摘 里子引き渡し差し止め


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 さまざまな事情で家族と離れて暮らす子どもを迎え入れ、養育する里親制度。里親委託は親権者である実親の同意を必要とする。制度上、里親の意向は反映されにくい。専門家は児童相談所と里親の意見が対立した場合の仕組みづくりの必要性を指摘する。

 「大人の都合で子どもを振り回し、子どもの心まで壊すような児相のやり方は、絶対にあってはならない」。那覇市の小橋川学さん(56)は会見で涙声で語った。里子の児相への引き渡しが迫る。

 天真らんまんで、ピアノやお絵描きが好きな児童。慣れない人や場所が苦手だ。妻の久美子さん(55)は「実親に渡したくないという考えは一切ない。面会などの段階を踏んでほしい」と話す。

 代理人の川津知大弁護士は、一時保護がやむを得ないとしても、児童福祉法33条に基づき、児童を委託することはできると指摘。「現状では夫妻の下にいるのが一番いい。児相は子どもの最善の福祉の検討を」と述べた。

 沖縄大の山野良一教授(児童福祉)は、実親が引き取れる状況にあれば、親子再統合に向けて準備するのが前提だとしつつ「障がいの有無に関わらず、乳児期から育てられた子どもが新たな養育者のもとへ行く場合は、子どもへの負担が大きく、相当な難しさがある」と指摘する。

 国が里親制度を推進する中、児相と里親の意見が対立するケースは今後も増えると予想される。里親が意見表明できる場は限られており「意見が対立した場合、調整できる仕組みをつくる必要がある」と述べた。