コロナ禍長引き経済停滞、沖縄振興予算3000億円割れ<県政この1年>


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 2021年の沖縄県政は昨年に引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対応に追われた1年だった。4カ月間の長期に及んだ緊急事態宣言によって社会・経済活動は冷え込み、県は事業者支援に奔走した。沖縄・奄美の世界自然遺産登録、東京五輪での県勢活躍など、明るい話題もあったが、10月上旬以降は、小笠原諸島の海底火山噴火の影響とみられる大量の軽石が県内各地に漂着。米軍の事件・事故も相次ぎ、県として危機管理が問われ続けた。政府は次年度の沖縄関係予算を前年度比326億円減の2684億円と決定。辺野古新基地問題を巡り、県と裁判闘争が続く中、玉城県政への「冷遇」との観測も広がる。激動の1年を振り返り、沖縄の日本復帰50年を迎える22年を展望する。
 (池田哲平、梅田正覚、明真南斗、塚崎昇平)

県が設置したワクチン接種会場で、接種を受ける若者ら=9月8日、県立武道館

<新型コロナ>経済活動抑制 長期に

 2020年に続き、玉城デニー県政は新型コロナウイルスの猛威への対処が最大の課題となった。長引くコロナ禍で県民生活へのダメージが蓄積する中、暮らしをどう守っていくのかに腐心した。昨年末からの第3波に引き続き、3月以降はアルファやデルタなど変異株の流行が続いた。10月末までの間、ほとんどの期間で飲食店の時短営業要請を発出するなど経済活動を抑制せざるを得なかった。

 沖縄への緊急事態宣言は、5月23日から9月30日まで約4カ月間続き、期間は全国で最長となった。県は1~2月には県独自の緊急事態宣言、9月は「独自措置」を出して、感染症対策の徹底を県民に呼び掛けた。

 感染症の影響長期化に伴い、事業者への協力金支給などを切れ目なく進めるとして、県は20次にわたる補正予算を編成し、約2529億円を予算化。その結果、2021年度一般会計予算は初めて1兆円を超えた。

 県はワクチン接種事業を積極的に推進し、12月22日現在の1回目接種率は69・0%となっている。

 11月以降、経済活動は徐々に戻ってきているが12月中旬以降、米軍キャンプ・ハンセン内で大規模なクラスター(感染者集団)が発生。同月17日には基地従業員が新変異株「オミクロン株」に感染していることが明らかとなるなど、玉城知事は「流行の立ち上がり期にある」と危機感を強める。流行が続けば、まん延防止等重点措置も視野に対策を進めている。

<新振計・予算>新沖振法、10年維持 来年度沖縄予算3000億円割れく

来年度の沖縄関係予算について財務相との大臣折衝の結果を報告する西銘恒三郎沖縄担当相=22日、東京

 沖縄が日本に復帰した1972年から10年ごとに延長してきた沖縄振興(開発)特別措置法が、2021年度で期限切れになることを踏まえ、22年度以降の新たな沖縄振興の議論が本格化した。自民党の沖縄振興調査会は4月から議論を深め、政府は新たな法制度を整備することを12月に決めた。期間は10年としたが、法付則として5年以内に見直す規定が新たに設けられる。

 跡地利用特別措置法の改正と沖縄関係税制の延長、沖縄振興開発金融公庫の存続も決まった。政府は来年1月の通常国会に法案を提出する。

 これに伴い、県は21年度で期限が切れる現行の沖縄振興計画(振計)に替わる次期振計の策定作業を進めた。次期振計は「環境」「社会」「経済」が調和した「安全・安心で幸福が実感できる島」の形成を目指すとしている。

 一方、政府は22年度の沖縄関係予算を前年度比326億円の大幅減となる2684億円と決定した。県が使途を決められる沖縄振興一括交付金は同219億円減の762億円となった。予算の3千億円台確保を求めていた玉城デニー知事は「このような大幅な減額は大変残念」と述べた。10月に県出身者として5人目の大臣に就任した西銘恒三郎沖縄担当相は「合格点はあると受け止めている」との見解を示した。