「おとなしい牛」が軽量王者に 闘牛「メイキラ陸王」牛主の仲村さん、力を信じて育成


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「一つでも多く勝ってほしい」と語る軽量級王者「メイキラ陸王」牛主の仲村舞子さん(左端)と娘の一華さん(中央)と息子の優毅さん=26日、うるま市石川東恩納

 【うるま】11月の全島闘牛大会の軽量級決定戦。攻守が交互に入れ替わり、息もつかせぬ展開に観客は沸いた。王者・石山聖空宝志(いしざんきらぼし)みおりの強烈な腹取りをくらいながらも、ひるむことなく、挑戦者のメイキラ陸王が逆襲に転じて、勝利を収めた。「何があっても勝つと信じていた」。高値での取引の声がかかっても、決して譲ることなく、大切に育てた牛主・仲村舞子さん(30)の勝利の瞬間でもあった。

 「今もそうだけど、相手に向かっていくのか心配なほどおとなしい牛」。仲村さんは、メイキラ陸王との出合いを振り返る。知人の紹介で約4年前に、徳之島からやってきた。バランスの取れた体つきに引き締まった首を見て、「体は悪くないな」と感じたという。

 おいとめいの名前「めい」「煌翔」「陸」の名前をくっつけ「メイキラ陸王」と名付けた。

 案じていた闘争心は、無用の心配に終わった。沖縄デビューの18年のうるま祭り闘牛を皮切りに6連勝無敗の強さを見せた。ほぼ、真上に伸びた「タッチュー」角から、突き、割り技など多彩な攻撃を繰り出し、これまでの試合はすべて7分以内で勝負を決めている。この間多くの「売ってくれないか」の声がかかったというが、「絶対チャンピオンになれる牛だから」と信じて、譲らなかった。

 今も、子どもたちが上に乗っても、怒ることのない穏やかな性格は変わらない。ただ、闘牛場に向かうトラックに乗せた瞬間から、闘志があふれ出す。「一試合でも多く勝ってくれたらうれしいな」。そう話しながら、愛牛をみつめた。

 5月の全島闘牛大会では、軽量級王者として初の防衛戦に臨む。

(新垣若菜)