【識者談話】人口が減っていく沖縄…「要介護者減が急務」川北秀人氏(人と組織と地球のための国際研究所代表)


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川北秀人氏

 日本全体で少子高齢化が進み、全国的には珍しい人口増加県の沖縄も同様の傾向をたどっている。今後2030年代に向けて、沖縄もこれまでの前提が崩れてくるのは間違いない。
 2010年から2020年の国勢調査を基に5歳差ごとの「残存率」を算出すると、沖縄は0歳から14歳までの子どもの残存率が全国平均に比べて低い一方、それ以上の若者から高齢者までは全国に比べても遜色がない。若者の転出数も全国に比べて多いわけではない。

 沖縄の特徴は75歳以上の後期高齢者で、寝たきりや認知症で常時介護が必要な「要介護3」以上の割合が突出して高いことだ。15年の統計を分析すると、後期高齢者のうち、要介護3以上と認定されている人の比率が14.5%と全国一高い。全国平均は11.5%。これに伴い後期高齢者の1人当たり医療費も全国平均より高い傾向にある。

 県と各市町村はそれぞれ介護費の約12.5%を支出する必要があり、平均より高い要介護度は負担増を意味する。今後も続けば億単位で増えていく。逆に全国平均を目指して3ポイント減らせば、億単位の削減ができる。

 15年時点では85歳以上の約4人に1人は要介護3以上だ。これから沖縄でも高齢者の増加と長寿化の一方で、介護の担い手となる世代は減り始める。介護の生産性を上げる工夫と同時に、介護を受ける人を減らす努力を早急に進める必要がある。さらに担い手としての外国人の定住促進支援も、県独自で進めてもいい。

 少子高齢化と並行して、「小家族化」にも着目したい。自治会の加入世帯数は変わらなくても、家族の数が減れば、時間的にも金銭的にも余裕がなくなっていく。サービス業で働く人の比率は高まり続けており、週末が休みでない人も多い。暮らし方が変われば、地域づくりの在り方も進化が求められる。大切なのは若者の事情や気持ちをきちんと把握することだ。

 全国的にも若者が活躍している自治体は小規模でも人口が伸びている。昭和世代の感覚ではなくて、若い世代が大切にしていることや困りごとを把握しながら、若者の挑戦を応援し、一緒に地域の未来づくりを進めてほしい。

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 沖縄は2022年5月、日本復帰から50年の節目を迎える。本土との経済格差が大きかった復帰当時は若者の流出などで人口の減少が起きると不安視する声もあったが、日本全体の人口が減少する中でも、沖縄県は現在まで一貫して人口増加を続けてきた。一方で少子高齢化や小規模離島の過疎化が進み、次の10年には沖縄全体でも人口減少に転じる予測も示されている。人口動態や将来推計値などのデータを用いて、復帰から50年を経た沖縄の姿を紹介する。