育児放棄で施設育ち…乗り越え夢に挑む25歳「途上国の子どものために」国連職員目指し英留学


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サセックス大学の大学院で学ぶ神谷成実さん(右から2人目)=2021年12月、英国(神谷さん提供)

 「国連職員になりたい」という夢をかなえるため、神谷成実さん(25)はアルバイトでためた資金と奨学金で英国のサセックス大学に10月から留学している。小6から高3まで、本島南部の児童養護施設で育った。ネグレクト(育児放棄)で、一日の食事がままならない時期もあった。「途上国の貧しい子どもたちの状況が想像できる。問題解決する手伝いがしたい」と経験をばねに将来像を描く神谷さんに昨年12月25日、オンラインで取材した。
 

 父親の暴力と飲酒などが原因で、幼いころに両親は離婚。一時保護所や母子寮などで暮らしたこともあった。小学校低学年のころ「自分だけがかわいそうだと思っていたが、そうじゃない」と思い始めた。海外に目を向けると、児童労働など、さらに過酷な子どもたちがいる。「何か役に立てないか」と思い描くようになった。

 小6で児童養護施設に入り、中学卒業後向陽高校に進学した。大学は授業料が全額免除となる奨学金を得て沖縄大に進学。在学中、奨学金でオーストラリアに9カ月留学し、現地でフランス語も学んだ。

 一人暮らしだった大学時代は、アルバイトを掛け持ちし家賃を賄った。「月の光熱費が千円くらいだったこともある」と明るく笑うが、それほど節約を重ねた。

 卒業後、青年海外協力隊に合格し、ベトナムに赴任予定だったが、同時期に妊娠。協力隊には参加できなかったが、逆に国連職員にとの気持ちが高まった。

 応募条件となる大学院卒の資格を得るため、子どもを米国に住む夫に預け、留学を決意する。「家族のためにも将来安定した生活が送れるようにしたい」。家族の存在も決意を後押しした。1歳9カ月の息子と夫とは、毎日ネットで連絡を取り合っている。

 児童養護施設出身者や里子に奨学金を贈る団体「にじのはしファンド」と貯金などで費用を捻出し、1年で卒業可能なサセックス大学で国際教育開発学を学ぶ。「予習の量が多く、アカデミックな英語で大変だが、将来はユネスコ(国連教育科学文化機関)で働きたい」と目を輝かせる。

 同じ境遇の子どもたちに「よくも悪くも社会は施設で育ったかどうか区別しない。そのような意味で、ハンデはもらえないけれど、児童養護施設出身だからといって過度に劣等感を感じたりせず、同じ土俵に立てると思ってほしい」とエールを送った。
 (知花亜美)