「潜在話者」復興の鍵 話せる場づくりが課題「しまくとぅば」<復帰50年のウチナーンチュ像>1


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 ウチナーンチュとしてのアイデンティティーを語る上で重要な「しまくとぅば」(うちなーぐち)を「話せる」という人が、琉球新報の2021年県民意識調査で25%にとどまった。過去5回の調査で最も低い。初回の01年調査と比較すると半分以下に落ち込んでおり、この5年の減少幅は最も大きくなった。

 「しまくとぅばをどの程度使えるか」との質問に「聞くことも話すこともできる」と答えた人は、前回から15・8ポイント減って25・4%だった。一方で「聞けるが、話せない」「ある程度聞けるが、話せない」「まったく聞けないし、話せない」の合計は72・8%に達し、話せない人が大部分を占めた。

 これまでも話せる人が減少傾向にある中で、県内では官民挙げて継承や使用促進の対策が取られてきた。だが話せる人は増えるどころか減り続けており、その傾向に拍車が掛かっているのが浮き彫りになった。沖縄キリスト教学院大学の新垣友子教授(51)は「今までより深刻ではないか。減少スピードに活動が追いついていない」と危機感をあらわにする。

 話せる人が減り続ける影響は、若者だけではなく全世代に及ぶ。「聞くことも話すこともできる」と回答した人の割合を21年調査と16年調査を比べると、減少幅が最も大きいのは60代で31・5ポイント減るなど、50代以上はいずれも20ポイント以上減少しており、影響が顕著だ。

 一方、新垣教授は「聞けるが、話せない」「ある程度聞けるが、話せない」と答えた人が約6割いることに着目する。話者になれる可能性のある「潜在話者」だとして、世代を超えて学び合う場や話せる場を増やすなど、あらゆる取り組みが復興の鍵を握るとみる。

 継承の実践者も同様の見方だ。うちなーぐちによる童唄研究家の宮城葉子さん(65)は遊びやあいさつなどを通して、子どもたちにうちなーぐちを教えて30年以上になる。活動によって「『潜在話者』の子どもたちが指導者に成長した」と語る。保育園や幼稚園などでの教育を重視し、うちなーぐちを話せる保育士育成などに取り組むべきだと提案する。

 話せる人は減り続けているが、しまくとぅばを「どう思うか」との質問に対して、愛着があると回答したのは「ある」「どちらかと言えば」を合わせて77%となり、好意的な意見が大多数だ。消滅の危機が指摘されるしまくとぅばを後世に残せるか。この問いはウチナーンチュ自身に向けられている。 (仲村良太)

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 琉球新報が昨年11月に実施した県民意識調査の結果について、各界の識者や関係者に県民像を語ってもらい、過去の結果と比較しながら今後の展望を探った。