名護市長選 投開票まで3週間 立候補予定者に聞く 雇用は?コロナ対策は?辺野古は?


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
(左から)選挙戦に向けて掲げる政策を訴える渡具知武豊氏=2021年12月28日、選挙戦に向けて掲げる政策を訴える岸本洋平氏=2021年12月18日

 【名護】16日告示、23日投開票の名護市長選は、投開票まで残り3週間を切った。2期目を目指す現職の渡具知武豊氏(60)=自民、公明推薦=と、新人で市議の岸本洋平氏(49)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=の立候補予定者2氏に、経済政策やまちづくりの取り組み、新型コロナ対策、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題に対する見解などを聞いた。(’22名護市長選取材班)


<渡具知武豊氏>国と県係争 決着見守る 経金特区 企業誘致進める

 

 ―出馬を決めた理由と最も訴えたい政策は。

 「1期4年で成し遂げた実績は子どもの医療費無料、ごみ袋半額など多くある。公共施設の建て替えが必要になるなど市には多くの課題がある。基地問題だけが問題であるかのような閉塞(へいそく)感をもたらす市政運営は、二度とあってはならない。もっと輝く、もっと豊かな市を実現したいと思い出馬を決めた」

 ―米軍普天間飛行場の辺野古移設への考えは。

 「国と県による係争が続いているので、決着を見るまでは、見守るより他ない。是非について言及する立場にない。前市政までの長い期間、市民は常に基地問題で対立を強いられてきた。融和と発展をもたらしたい」

 ―再編交付金の交付が終了した後は、子育て無償化3点セットをどのように継続するのか。

 「今後も交付金を活用して基金を積み立て、事業を実施していく。再編交付金が有限であることは理解しており、その期限を迎えるまで国や県の動きを見極めながら、これまでと同様に粘り強く国などと交渉を重ね、財源を確保したい」

 ―経済、雇用政策は。

 「北部テーマパークの完成に向けて取り組んでいる。商機を逃さず、農業、中小企業・小規模事業者が稼げる環境支援を行っていく。『わんさか大浦パーク』などの施設は必要となる機能は整備し、互いの連携を強化する。経済金融活性化特別地区(経金特区)という税制優遇制度とデジタル技術を合わせ、スマートシティー構想を打ち出し企業誘致を進めたい」

 ―街づくりの目玉は。

 「市のにぎわいを取り戻したい。中心市街地の利便性の向上が重要だと考えている。具体的には国道58号移設による名護漁港の機能集約、鉄軌道やバスなどが交通結節する総合交通ターミナルの整備、飲食店や名桜大学まちなかキャンパスなどが入居する複合施設の整備などだ」

 ―新型コロナウイルスを巡る対策は。

 「『コロナ対策室』を新設し関係機関との連携を取りながら、迅速な対応をする。3回目の接種に向けた準備や、ダメージを受けた企業や、離職した市民のサポートにも迅速に取り組む」

 ―玉城県政の評価は。

 「来年度の沖縄振興予算が2680億円と厳しい金額になった。市民の生活に影響がないか危惧する。厳しい状況になったのは、県と国の対話がしっかりとなされていない表れだ。そのような県政運営について評価することはできない」
(聞き手 長嶺晃太朗)


<岸本洋平氏>新基地建設 絶対認めぬ 起業と若者定住 促進する

 

 ―出馬を決めた理由と最も訴えたい政策は。

 「市長を務めた父建男は『誇り』という言葉を大切にしていた。私も平和で豊かな誇りある名護市を、市民力を生かして築きたい。暮らしに大きな影響を与え、自然環境を破壊する新基地建設は絶対に認められない」

 ―米軍普天間飛行場の辺野古移設への考えは。

 「県知事による設計変更不承認を支持し、連携して新基地を止める。具体的には美謝川の水路切り替えなど市長権限の部分を明確にし、国に市の考えを示したい。渡具知武豊市長は『裁判の推移を見守る』とあいまいな態度を続けている。暮らしや自然を守れず、次世代に対して無責任だ」

 ―再編交付金に頼らずとも保育料・学校給食費・子ども医療費の無償化継続は可能と訴えているが、具体的な財源は。

 「稲嶺前市政で保育料の2人目半額、3人目無料を市財源で実施し、無償化に現在要する約7億円の3分の1は捻出していた。国や県の無償化施策も広がり、当時より市負担は減った。残りは創設予定の子ども太陽基金、市庁舎や学校のLED化による光熱費削減などで捻出する。公共施設運営に民間の力を取り入れるPPP(公民連携)方式も検討する」

 ―経済、雇用政策は。

 「名護漁港と商店街一帯を整備し、鉄軌道も県と連携して推進する。広域通信ネットワークが未整備な二見以北や羽地、屋我地などを早急に整備し、起業や若者の定住を促進したい。6次産業化ではネット販売を支援する課『ガジュマルネット』を立ち上げ、名護の商品をアピールし、市民の所得向上を図る」

 ―街づくりの目玉は。

 「名桜大に薬学部を新設する。県のニーズ調査で県民が求める施策であり人材不足でもある。北部医療センターと共に整備するよう県に働き掛ける。高齢者や障がい者を支える福祉の充実として介護認定時の一時金支給を行う。ごみ処分場建設は、ごみ分別を簡素化しつつ脱炭素化を図る」

 ―新型コロナウイルスを巡る対策は。

 「医療機関に5年間勤めた。現場の苦労は分かるつもりだ。医療、福祉、保育現場で働く人の声を聞き取り、適時に支援する。過酷な労働に見合うよう賃金引き上げなどに取り組みたい」

 ―玉城県政の評価は。

 「コロナ対策では医療機関との連携を構築し、医療崩壊を未然に防いだ。新基地建設問題でも県民投票の民意をしっかりと示し、政府と対峙(たいじ)している。大変評価する」
(聞き手 岩切美穂)