【識者談話】少ない女性管理職 原因は女性だけにあるのではない(成定洋子・沖大教授)<女性就労状況アンケート>


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成定洋子・沖大教授

 今回の調査では、総従業員数は女性の方が多いものの、役職段階が高くなるほど、女性比率が低くなる結果となり、意思決定のプロセスに関わる女性の割合は男性よりも圧倒的に低く、企業の組織構造が男性中心であることが明らかになった。

 また、業種や従業員数のジェンダー比率に関わらず、企業の最高意思決定機関が主に男性によって占められ、ジェンダー化されていることが分かった。特に、女性従業員の割合が約7割と高く、性別分業構造が際立つ医療は、取締役の女性比率が3%と、意思決定過程における性別分離も顕著だった。

 今回の調査では、派遣社員は従業員に含まれていないことから、派遣社員を含めた実際の従業員数に占める女性比率はより高くなり、正社員・管理職・取締役の女性比率はさらに低くなる可能性がある。

 沖縄県は、全国と比べて、管理職に占める女性の割合が高く、男女賃金格差が比較的小さいが、そもそもの賃金水準が低いという問題がある。中小企業が多く、非正規率が高く、勤続年数は短い。県内のジェンダーと労働の問題について考えるためには、男性正社員モデルを中心とした分析方法を見直し、いかに労働市場や労働過程がジェンダー化されているのか、どのようなジェンダーに関わる社会規範が市場や職場、労働者や家庭に影響を与えているのかを明らかにする必要がある。

 つまり、管理職や取締役に女性が少ない理由を女性だけに求めるのではなく、市場や職場、家庭や社会においてどのようなジェンダー関係が作られているのかを文脈的・重層的に見る必要がある。したがって、「女性活躍」という言葉は、「女性が多い理事会は時間がかかる」という発言のように、労働問題や労働過程におけるジェンダー関係を不可視化し、「活躍」できないのは女性のせいだとして、女性だけに問題の原因を求めかねず、注意が必要である。

 33年前、35歳とされていた県内のバスガイドの定年制度が撤廃され、男性と同じ定年となった。問題の所在は、バスガイドの女性たちではなく、女性は若い方がいいという会社や社会が内面化していたジェンダー規範にあったことを改めて共有したい。
 (社会人類学・ジェンダー研究)