位牌継承「男女どちらでも」7割 変わる意識、少子化影響も<復帰50年のウチナーンチュ像>4


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 沖縄独特の祖先崇拝やトートーメー(位牌=いはい=)継承については大きな意識の変化が起きている。琉球新報が実施した2021年の県民意識調査で、トートーメー継承の考え方を聞いたところ「男女どちらが継いでもいい」との回答が7割近くに達した。背景にはジェンダー平等の意識が浸透したことや、少子化などで選択肢が限られてしまっているとの見方がある。

 女性史研究家の宮城晴美さん(72)は継承する性別について「こだわらない人が多くなっている」と語り、SDGs(持続可能な開発目標)の目標にも含まれるジェンダー平等の意識が報道などを通じて浸透していると好意的に捉える。

 トートーメーは嫡子(長男)が継承するという慣習は近年まで根強かった。本紙06年調査でも「男女どちらでもいい」は42.7%だったのに対し、「男性が継いだ方がいい」は37.0%で、5ポイント差と拮抗(きっこう)していた。前回16年調査でも「男女どちらでもいい」と答えた人が多数だったが、その差は17ポイントだった。

 今回は「男女どちらでも」は68.0%に上昇し、「男性が継いだ方がいい」は12.5%にとどまり、差は50ポイント以上に広がった。年代別にみても全年代で「男女どちらでも」が60%を超えた。
 

 (左)座間味香深さん (右)宮城晴美さん

 「絵でみる御願365日」など、沖縄の慣習に関する本を多数出版するむぎ社代表の座間味香深さん(45)は調査結果に対し「男性のみの継承が困難になってきた」とみる。

 少子化や住居形態の変化などさまざまな要因が絡み、長男のみの継承が難しくなる中、ジェンダー平等の意識の広がりも相まって女性が継承することへの「心理的抵抗が和らいできているのでは」と推察した。

 一方で「沖縄の伝統的な祖先崇拝についてどう思うか」との質問に対して「大切だ」と答えた人は、「とても」「どちらかと言えば」を含めて81.5%となった。大多数が大切だと感じているが、初回を除いた過去3回の調査ではこれらの回答は90%を超えていた。

 座間味さんは祖先崇拝を大切にする気持ちは大きく変わらないが「優先順位が多少低くなっただけでは」とみて、新型コロナの影響で一時的に下がった可能性を指摘した。宮城さんも、例年はシーミーや旧盆には家譜を調べる人がいるが、新型コロナの影響で、この間ほとんどいなかったと推察し「今回は特異な例かもしれない」との見方を示した。

 「祖先崇拝」そのものに対する意識も変化しているのか。今後の動向が注視される。

(仲村良太)