沖縄県が憤り「コロナ米軍要請、年末やってくれれば…」国の後手対応を非難


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 在日米軍基地に由来するとみられる新型コロナウイルス変異株の広がりを受け、林芳正外相は6日に米兵らの外出制限などをブリンケン米国務長官に求めたが、県は昨年12月21日の段階で、クラスター(感染者集団)が発生する米軍キャンプ・ハンセン(金武町など)からの米軍関係者の外出禁止を日米に求めていた。県幹部は「(要請が)もっと早ければここまで感染が広がらなかった」と、米国への申し入れに及び腰な日本政府の対応遅れを指摘する。

 この間には、ハンセンやシュワブ所属の米軍人が、基地の外で飲酒運転容疑で摘発されることも続いた。県内で過去最多となる新規陽性者が確認される6日まで、外相から米国への申し入れがなかったことについて、外務省は「事務レベルでは外出規制を求めてきた」と釈明する。

 在日米軍は日米地位協定で日本側の検疫が免除される。昨年末からの在沖米軍基地での感染拡大は、米側が独自に出入国時検査を緩和したことが要因とみられる。県内でのオミクロン株の拡大について、県は国立感染症研究所の解析を根拠に「時系列で考えると、基地から市中感染へと広がった」と指摘する。

 米軍岩国基地を抱える山口県岩国市でも感染者が急増し、基地の外での感染は隣接する広島県にも広がる。山口県の村岡嗣政知事は6日の全国知事会のオンライン会議で、「基地所在地の共通の課題であり、近隣県にも影響する」と現状の危機感を訴えた。

 「ハイレベルでは初の要請」(外務省)となった林外相による要請だが、米軍が外出禁止などのより強い行動制限に応じるかは不透明だ。米軍は陰性結果が出るまでのマスク着用の義務化を6日になってようやく実施するなど、県内の防疫対策との落差は大きい。

 県庁内では、米軍や日本政府の対応が早ければ、感染拡大のスピードを緩和できたという見方も広がる。県幹部は「県が年末から要請していたことを、もっと真剣にやってもらえていれば」と憤った。

 玉城デニー知事は6日の会見で「外相が直接要請をするのは日本側からの大きな意思表示だ」と述べ、米側に対策強化の着実な実施を求めた。

 (塚崎昇平、斎藤学)