どうする名護「素通り観光」空洞化進む中心街 かつては映画館や衣料店も<名護市長選1・23>


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コロナ禍で客足がさらに鈍くなり、空き店舗も目立つようになった名護市の商店街=2021年12月29日

 昨年末、名護市東江のA&Wレストランの駐車場はレンタカーがあふれていた。ルートビアを手にした東京の男性(51)は「中心市街地は行ったことがない。何かあるんですか」と首をかしげてレンタカーに乗り込み、観光施設のある市為又に向かった。素通りされた中心市街地の市営市場は正月用の食材を買い求める地元客で普段よりにぎわいを見せていたが、近隣はシャッターが下りたままの店もあり、物寂しい雰囲気が漂っていた。

 “素通り観光”と呼ばれる名護市の中心市街地は、かつては北部最大の商業地だった。市宮里から為又に向かう国道58号沿いに大型店舗の進出が相次いだことなどに伴い、空洞化が進む。

 名護市の入域観光客数は2011年の約490万人から右肩上がりで増え続け、19年は646万人に達した。「コロナ前は海外からの観光客も含め、人が来るようになっていた」。コロナ禍で観光客数は減少した。市観光協会理事長の前田裕子さん(54)は渋い表情を浮かべる。

 「映画館や衣料店。なんでもあった」。懐かしそうに話すのは名護十字路商店連合会会長の山城孝さん(52)。現在の市営市場の場所は40~50年ほど前、300店舗ほどが営業していたが、現在は29店舗。集客につなげようと山城さんらが中心になり、さまざまなイベントを展開してきた。

 市は名護沿岸と中心市街地を連動させて活性化を図る構想を掲げる。「大きな建物ではなく、市民が集える公園を造ってほしい。人が集まれば自然に中心市街地にもにぎわいが戻るはずだ」。市営市場を指定管理する資源活用管理協会の池間學さん(72)は強調する。「高齢者の生きがいのため、商店街の維持は必要だ」

 空き店舗を利用したサテライトオフィスや長期滞在型テレワークの誘致の構想もあるが、活性化の“特効薬”となるかは不透明だ。「できることから取り組む」。山城さんは誘客を目的にしたスタンプラリーの準備に取りかかった。

 (名護市長選取材班)