「大学創立時の理念である“教育の機会均等”の実現に、今一度立ち返る必要がある」。猛威を振るい続ける新型コロナウイルスは教育現場にも暗い影を落とす。厳しい状況下で選出された第25代学長候補は「学びの環境整備」に強い思いを抱く。17日の理事会で正式に就任が決まる。
「経済状況が厳しくなって学びたいのに学べない学生が増えている。学びたいと考える学生がその機会を逃すことなんて、あってはならない」。沖縄大は2013年に県内で初めて、児童養護施設の利用者ら社会的養護が必要な若年者を対象にした特別奨学生制度を新設した。「これまで取り組んできたことを、さらに前進させる」と意欲を燃やす。
島根県出身。琉球大医学部医学科に進んだ。緊張症を治そうと考え、大学では演劇部に入った。当時の部顧問で後に沖縄大の名誉教授となる川井勇さんからの誘いを受け、鳥取大大学院修了後の08年に沖縄大教授に就任した。
外科医から教育者への転身に驚く人もいたが「医学も教育も社会を変えることができる」と考える。学生に「社会を変えるのは自分と縁遠いことじゃない」と何度も話してきた。「学生も教職員も互いに多様性を認め合って、一緒に成長できれば」と願う。
趣味は合唱。新型コロナの新規感染者が減少した時期に、ベートーベンの「第九」を歌った。再び心置きなく合唱できる日を心待ちにする。家族は妻と3人の娘。進学と就職で県外にいる娘たちは、学長候補選出に「いまだ半信半疑」という。60歳。
(嘉数陽)