【石垣】目には目を、虫には虫を―。八重山地域の農業で近年、小さな生き物たちが害虫対策で大きな成果を挙げている。ゴーヤーなどにつく害虫を餌とする体長1ミリにも満たないダニの仲間などを畑に散布し、害虫を食べてもらう「天敵栽培」と呼ばれる栽培方法が広まりつつあるのだ。農薬を減らしながら収穫量も上げることができるといい、導入した農家からの評判も良い。
天敵栽培は「スワルスキーカブリダニ」などの虫を活用して害虫を駆除する。この栽培方法は、ナスの生産が多い高知県などで盛んだった。ナスの受粉にはハチが必要で、ハチを生かしつつ害虫を取り除く必要があったことから、天敵栽培が取り入れられたという。県内では5年ほど前から、八重山地域のゴーヤー農家などで導入が進んでいる。
従来の農薬を使った害虫対策は、薬剤での完全な防除が困難だった。小さな害虫はライフサイクルが早く、すぐに薬剤へ耐性を持つようになるという。また多くの農家が、薬剤散布を重労働と感じているという背景もあった。
一方、天敵栽培では対象となる害虫の薬剤への耐性関係なく害虫を駆除できる。薬剤散布の労力もかからず、食や環境への安全性も高くなる。ゴーヤーに農薬をまくタイミングが、オクラの収穫期と重なるため、農家からはオクラの収穫作業に集中できると好評だという。
石垣市内でゴーヤーを栽培する宜野座安剛さん(40)は、天敵栽培を導入した農家の一人だ。かつてはゴーヤーの3分の1は害虫の被害に遭っていたという。だが天敵栽培を導入して以降、被害は激減した。宜野座さんは「試しに天敵栽培を導入したら、かなりの効果があった。作業の手間も減り他の作業に時間をかけられるようになった」と喜ぶ。県の担当者も「農家からの評判が良い」と話し、さらなる普及へ取り組みを進めている。
(西銘研志郎)