基地負担減へ沖縄県が「外交」 米軍の分散化訴え アジア太平洋、各国と信頼構築


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 軍事力の強化を続ける中国への対応を念頭に、日米の軍事一体化が加速化する中、県は基地が集中することによる沖縄の軍事的な脆弱(ぜいじゃく)さなどを対外的に発信し、分散化を求める戦略を立てている。それと同時に2022年度以降、アジア太平洋地域の国々へ働き掛け、協力関係を構築していく構えだ。

 米国防総省が20年11月に発表した、世界規模の米軍態勢を見直す「グローバル・ポスチャー・レビュー」(GPR)は、対中国に重点を置く姿勢を堅持した。7日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で日米は一体化を鮮明にし、名護市辺野古の新基地建設も堅持した。沖縄の基地負担増への懸念が一層高まるが、太平洋地域では米軍の誘致に乗り出す国も出ている。

 太平洋の島国パラオは、米国から財政支援を受ける一方で、国防と安全保障を米国に委ねる「自由連合盟約」を結んでいる。同国は米側に港湾施設や滑走路、訓練場の建設、米沿岸警備隊の駐留を提案している。

 パラオは、南西諸島から台湾、フィリピンにかけての「第1列島線」と、伊豆諸島からニューギニア島までの「第2列島線」の間に位置。米軍の戦略に詳しい沖縄国際大の野添文彬准教授は「米軍の分散化という観点でパラオは重要な拠点だ」と指摘し、「基地移転まではできなくとも、訓練移転などを通して沖縄の基地負担軽減につなげることは可能だ」との見解を示した。

 さらに、米国防総省はGPRで、アジア地域で米軍が利用可能な拠点を増やすことや、オーストラリアや太平洋諸国でインフラ整備も盛り込む。野添氏は「中国のミサイル攻撃能力の向上に備え、第2列島線の基地を強化しつつ、第1列島線の兵力配備をより柔軟にしようとする可能性がある」と分析。米軍の利用拠点や訓練のローテーションを増やすことで「沖縄の負担軽減につなげることもできるのではないか」と語った。

 県は米軍の戦略の変化を捉えつつ、沖縄の過重な基地負担を解消させるためには、米国と中国の対立激化によるアジア太平洋地域における緊張の緩和が不可欠だと捉える。そこで、22年度から新たに地域でのネットワーク構築事業に取り組み、アジア太平洋の国や地域に働き掛け、安全保障を除いた産業や人材育成など幅広い分野で協力関係を構築する考えだ。

 県が各国との信頼醸成を深める「自治体外交」を推進し、協力可能な項目ごとに連携に関する覚書(MOU)締結などを視野に入れている。中国や韓国、台湾など近隣の国や地域、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国、在沖基地の分散先にもなり得るオーストラリアやパラオを対象として検討を進める。

 県の溜政仁基地対策統括監は「アジア重視の米国の戦略は当面、変わらないだろう。『だから沖縄の基地を強化する』と言われると困る。だめだと言い続けなければならない」と語る。同時に「(基地集中の)前提となっている地域の緊張そのものを緩和していきたい」と語った。
 (明真南斗)