「朝ご飯食べてない…」貧困支援どう届ける?制度知らぬ世帯も<名護市長選1・23>


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学習支援教室「くにむとぅや~」でクッキー作りをする子どもたち=5日、名護市大中

 「ココアパウダーを入れた方がいいかな」「こんな形はどう」。5日、名護市大中の学習支援教室「くにむとぅや~」では、子どもたちが和気あいあいとクッキーを作っていた。NPOで学習支援などに取り組む宮里辰宏さん(46)らが運営する教室には、放課後や休校期間中、自宅で過ごすことが難しい子どもたちが集まる。

 「朝ご飯を食べていない子が多い」。学校や地域関係者らの声を受け、宮里さんは屋部中学校と羽地小学校で朝ご飯を提供する取り組みにも携わる。屋部中では当初は5人程度だったが約40人に増加。羽地小では80人近く集まった。

 朝ご飯の提供事業は主に地元企業、団体からの支援、農家からの差し入れなどで成り立っている。くにむとぅや~は沖縄子どもの貧困緊急対策事業として名護市から一部委託を受けて運営しているが、資金は決して十分とは言えない。宮里さんは「貧困対策をしている人が貧困の場合が多いよね」と苦笑いする。

 名護市は子育て支援策の充実を図ろうと、子ども医療費や学校給食費の無償化などを実施してきた。「無償化は良いことだが、制度を知らずに利用できていない世帯もある」。名護こども食堂の神谷康弘さん(49)は学校に行けない子どもや、虫歯になっても病院に行くという選択肢すら思いつかない家庭を見てきた。「サービスにたどりつくまでのプロセスを支援することが大事だ」と指摘する。

 宮里さんは「公的支援はいずれ立ち枯れするかもしれない。継続して支援を続けるには団体の自立が必要だ」とするが、難しさも感じている。「行政は子どもの貧困問題に取り組む団体の自立をサポートしてほしい」と訴える。

 名護市長選では両立候補予定者とも無償化の継続などを訴えているが、十分に議論が深まっていない。「とにかく現場の声を聞いて、現状を見てほしい」と宮里さん。クッキーを頰張る子どもたちに視線を向けた。

('22名護市長選取材班)