スーパーヨット岸壁構想、富裕層消費に与那原など期待 イベント施設と連動も


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スーパーヨットに対応した岸壁や浮桟橋の整備予定地=2021年12月20日、与那原マリーナ

 超大型クルーザー「スーパーヨット」の産業は世界的に急速に拡大し続けているが、国内では対応した岸壁や、浮桟橋を備えた港は少ない。県は与那原マリーナに岸壁などのインフラを整備することで拠点化し、県外との比較優位性を高め、新型コロナウイルスの収束後に沖縄への誘致を本格化させる考えだ。

 スーパーヨットのオーナーは欧米を中心とした超富裕層で、世界各地の景勝地などを周遊し、寄港した港で文化体験やアクティビティなどを楽しむ。平均的な55メートルのヨットが1年間に使う費用は5億円を超えるとされている。過去に日本国内で約1カ月間寄港した際、1隻の食材や燃料費などで、消費した額は4千万円以上にも上った。

 県はこうした消費の「直接効果」に着目する。新たな沖縄振興計画の素案や中間取りまとめは、スーパーヨットの受け入れ環境、大型MICE(マイス、企業の報奨旅行や国際会議、展示会などの総称))施設の整備によって「多彩で高付加価値の国際観光・交流拠点の形成や、ブランド価値を生む親水空間の提供を図る」と打ち出した。運天港、金武湾港、本部港、宮古、石垣などでも受け入れ環境の整備に取り組む方針も示している。

 与那原マリーナは過去にスーパーヨットが寄港した実績はあるが、小型ヨットやクルーザーが多く停泊するほか、クレーンの設置などによって接岸できる場所がなくなっていた。県は中城湾港港湾計画の改訂によって、与那原マリーナ内で岸壁などを整備するほか、停泊しやすいように湾内の波を穏やかにする「波除堤」を新たに設置することも検討している。

 スーパーヨットの誘致活動を積極的に推進してきた与那原町の照屋勉町長は「富裕層が寄港することで、ダイレクトに地域へお金が入ってくる。MICE施設と連動して、ホテルや商業地を形成することで、ポテンシャルを上げることができる」と述べ、マリーナ整備をてこに、地域経済活性化に向けた戦略を展開する考えを示した。

 昨年12月7日には自民党内でスーパーヨットの誘致を推進する議員連盟が誕生したほか、税関、入管の規制緩和が決定するなど、政府内でも機運が高まりつつある。

 沖縄総合事務局港湾計画課の志水康祐課長は「(沖縄では)停泊できる場所がなかったことで機会損失が発生していた。観光を高付加価値化するためにもインフラ面で受け入れる体制を整えることが必要だ」と述べた。(池田哲平、写真も)