prime

「世界で戦える選手に」 シュート武器に代表候補へ 水球女子・砂邊亜衣(秀明大)<ブレークスルー>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 水球の女子日本選手権を6連覇中の強豪、千葉県の秀明大1年の砂邊亜衣(19)=神森中―秀明八千代高出=が、昨年から日本代表トップチームの候補合宿に招集されている。高校の時に注力した肉体改造で磨きを掛けた持ち味のシュート力に対する評価は高い。「水中の格闘技」と評されるハードな競技で、国内屈指の選手たちと水中で激しくぶつかり合い、フットワークや泳力といった自身の課題を見定めた。世界で戦える選手になることを目標に掲げ、鍛錬を積む。

練習で力強いシュートを放つ砂邊亜衣=12月17日、千葉県八千代市の秀明大学ウォーターポロアリーナ(長嶺真輝撮影)

■壁を乗り越え

 水球チーム「沖縄フリッパーズ」中学生区分監督の父・昭利さん、日体大で活躍する兄・利貴(那覇西高出)の影響で幼少期から「プールが遊び場だった」という。「小学生の時から肩が強かった」とシュート速度に秀で、中学の頃には全国から集められる世代別の強化合宿にも参加した。しかし、進んだ名門・秀明英光高(埼玉県)で壁にぶつかる。

 「もともと長く泳ぐのが苦手」と持久力に課題を感じていたが、チームはカウンター主体の戦術で各選手に高い泳力を求めていた。そのため、週6日の練習では一日に5千メートルほどを泳ぐ。最初は「もうだめだ」と心が折れかけた。それでも先輩たちに食らい付いていくうちに「泳ぐのに慣れていった」と少しずつ体力を底上げしていった。

 高校で成長した点がもう一つ。入学時は「筋力が全然なくて腕も細かった」というが、ウエートトレーニングで背筋や肩回りなどを鍛え、武器のシュート力を磨いた。当時は35キロが最高だったというベンチプレスも、今では70キロを挙げる。2年から秀明大の近くに立地し、大学生と練習ができる系列校の秀明八千代高に転校。主力としてJOCジュニアオリンピックカップ準優勝に貢献し、U17日本代表にも選ばれてアジアエージグループ選手権で優勝を果たした。

砂邊亜衣

■高いレベルで刺激

 高校卒業後は国内で唯一となる女子専用水球プール「ウォーターポロアリーナ」を学内に完備する秀明大へ。「こんなにすごい環境はここしかない」と迷いはなかった。類いまれなシュート力を買われて1年生で主力に名を連ね、昨年の日本学生選手権で準優勝。OGを含めた秀明大クラブで出場した日本選手権では6連覇を達成した。

 昨夏には日本代表の候補合宿にも初めて招集され、12月にも参加した。国内トップの選手たちとプレーした感想は「まだまだ。特に1対1は全然だめ」。泳力、機敏な動きにつながるフットワーク、1対1の技術。シュート力は通用する感触を得たが、それ以外の課題がより明確になった。

 特に力不足を感じたのは泳力だ。2大会連続で五輪に出場し、今や世界トップの国とも渡り合う男子代表が採用した「パスラインディフェンス」に取り組んでいるという女子代表チーム。前掛かりな位置取りで積極的にパスカットを狙い、素早い攻守の切り替えで得点を狙う攻撃的な戦術のため、豊富な運動量と持久力が求められる。守備に必要なフットワークも含め「試合で生かすためにはまだ足りない。自分のシュートも海外に行けば普通くらい」と全体の強化を誓う。

 女子代表は昨年の東京五輪で初めて五輪に出場した。今年5月には福岡県で世界水泳が開催されるなど、国際大会は今後も続く。普段は笑顔の絶えないマイペースな19歳は、より高いレベルで刺激を受け「世界で戦える選手になりたい」と強い向上心をみなぎらせている。

(長嶺真輝)