23事業に交付金原資 「お金に色付いてない」 賛否巡り、揺れる市議会<「豊かさ」の選択 再編交付金と名護>◇下


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 名護市は本年度、子育て無償化事業、農道・排水路・漁港整備などの23事業について再編交付金を原資に展開している。辺野古新基地建設に伴って交付される再編交付金事業の賛否を巡り、市議会の対応は揺れてきた。

 渡具知市政下で、保育料などの無償化を盛り込んだ予算案が提出された2018年6月、市議会で多数を占める野党は、再編交付金の使用に反対し否決した。野党側は自治体の貯金にあたる「財政調整基金」を財源とした無償化を提案したものの、渡具知武豊市長が再議権を行使して無効化した。最終的に野党は退席し、与党のみで再編交付金を含む予算案を可決した経緯がある。

 市議会は18年9月の改選後も、多数野党が継続している。ただ、野党内でも再編交付金への容認姿勢を示す議員も出てきた。地域からの意見を受けて、容認姿勢に転じたという野党市議の一人は「地域からすればお金に色は付いていない。必要な事業もあり、予算は通さざるを得ない」と語る。市議会で再編交付金を含む予算案は与党と一部野党の賛成多数で可決され続けている。

 渡具知市政の17~21年度で、国から交付された再編交付金の総額は74億5096万円に上る。元市幹部の一人は「市行政では事業企画よりも予算獲得が重んじられてきた。国の大盤振る舞いもいつまで続くか分からない」と案じる。

 一方、再編交付金が市の歳入に占める割合は20年度で2・8%、21年度は9月末時点で1・4%程度だ。再編交付金を使った予算案に反対してきた市議の一人は「多くの事業に関わるため割合が多く思われるが、総額に占める割合は小さい。再編交付金ではなく、(各省庁や県の)補助メニューを探して財政運営すべきだ」と強調した。

 23日投開票の名護市長選に立候補を表明する現職の渡具知氏と、新人の岸本洋平氏の間で、再編交付金に対する見解は異なる。渡具知氏は交付金が有限であることに触れた上で「期限を迎えるまでに、粘り強く国などと交渉を重ね、財源を確保したい」と主張する。再編交付金がなくとも、子育ての無償化が可能とする岸本氏は「創設予定の基金や市庁舎や学校のLED化による光熱費削減などで捻出する」と訴える。

 市長選結果を受けた国の対応にも注目が集まる。市長選後の22年度の名護市への再編交付金交付について沖縄防衛局は本紙取材に「再編特措法の趣旨などを踏まえ、適切に対応する」と明言を避けた。
 (’22名護市長選取材班・塚崎昇平)