復帰直前の沖縄〈50年前きょうの1面〉1月13日「カゲの薄れた復帰予算/軍事優先」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。
 

 

 1972年1月13日の琉球新報1面トップは沖縄予算の内実分析。「カゲの薄れた復帰予算」「対米支払い、地料など合わせて2,203億円/実質は1,400億円程度」「県民生活には冷ややか」「軍事優先 自衛隊、基地関係はほぼ満額」の見出し。

 記事中では「対米支払いの一億ドル(三百八億円)は、外交交渉で決まったものだから、当然だとしても、軍用地料や(那覇空港返還に伴う)P3対潜しょう戒機の移転費などは、要求をすんなり受け付け、県民生活や豊かな県づくりに当てられるものは、きびしい態度でのぞみ、削減するという、沖縄に理解を欠いた姿勢がみられる」と記している。

 解説記事でも「遠い〝豊かな県づくり〟」との見出しで、政府の沖縄予算計上の在り方にの問題点を指摘している。

 連載「すべり出した五月返還」は最終回の5回目となりテーマは「外務省の取り組み」。「核抜き、基地縮小、土地契約など 難問題が山積」の見出しを掲げ、米軍が貯蔵する核兵器撤去問題については「(米)大統領声明による核ぬき保証は六九年の共同声明と実質的には変わってなく、県民の疑惑を十分に晴らすものとはいいがたい。臨時国会で問題となった岩国や横田基地の核貯蔵の疑い、横須賀基地の毒ガス持ち込み―など米軍の一方的な説明、意思表示だけで日本側の自主的な点検、確認ができないということでは国民の不信はぬぐえない」と懸念を表明している。

 このほか米軍基地と自衛隊配備を巡っては「沖縄の基地を縮小といっても、ほとんど遊休化しているものや、自衛隊によって肩代わりさせる部分というものになろう。(中略)日米間の事務レベルで進めている基地再編の話し合いも普天間基地から岩国基地へKC130空中給油機を移動し岩国のP3対潜しょう戒機を三沢基地へ移す―など『いかに米軍基地機能を維持しつつ整理、統合するか』というもののようだ」と指摘している。

 

【きょうの紙面】

2面(政行)各省庁の沖縄関係予算

3面(経済)空港を大幅改修へ

4面(外電)火星は〝生きている〟観測で新事実

5面(レジャー)女二人アフリカの旅

6面(スポーツ)琉王、輪島が大殊勲

7面(教育)私大統合遅れ、受験生とまどう

8面(写真)がんばれ上原、新垣

9面(地方)宮古の祖神祭りルポ

10面(那覇市内版)「公害」市民の苦情殺到

11面(社会)琉球バスあすから48時間スト

12面(芸能)カチューシャ二十九日に公演

 

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 琉球新報デジタルは沖縄の日本復帰から50年となる2022年1月から、1972年5月15日の日本復帰に向かう沖縄の様子を日々伝える当時の琉球新報紙面を、琉球新報アーカイブから転載して紹介していきます。