沖縄戦語り継ぐ思い定着 基地問題、年代で意識に差<復帰50年のウチナーンチュ像>8


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 気になる問題や戦争体験の継承、在沖米軍、自衛隊基地や日本における沖縄の立場など、県民の社会・政治意識はどうか。琉球新報の2021年県民意識調査の結果を見ると、沖縄戦を語り継ぐ思いは定着する一方、米軍基地に対する意識からはねじれた複雑な感情が見え隠れする。

 「今、気になる沖縄の問題」(三つまで選べる)について聞くと、「所得の低さ」を選んだ人が74.5%で06年調査以降4回連続でトップとなった。年代や地域にかかわらず多くの県民に問題だと捉えられ、割合は大きく増えている。

 この質問で順位を上げている回答が「基地問題」だ。選択する人も01年調査の36.3%から21年調査では46.1%に増えた。琉球大学名誉教授の星野英一さん(68)は「基地問題」に関心がある人が年代で差があることに着目する。

 「基地問題」と答えた人を年代別に見ると、20代が27.0%で最も低く、年代の上昇に比例して選択者も増えた。70代以上が62.2%で最も高く、トップの「所得の低さ」の64.4%と同程度だ。

 別の質問「沖縄の米軍基地についてどう思うか」の回答は「縮小すべき」が常に最多で、「撤去すべき」と合わせると6割を超える状況に変化は見られなかった。ただ、21年調査を見ると年代別では意識に差があり、20代・30代は「どちらとも言えない」が45%前後、40~60代は「縮小」が38~47%、70代以上は「撤去」が43.9%で、それぞれ各年代でトップだった。

 星野さんは二つの質問の結果から「強い関心は強い否定的評価、低い関心は『どちらとも言えない』の反映かもしれない」と推察した。同時に、米軍関係は事件・事故などの積み重ねで意見は変わるとみて今後の動向に注目した。

 沖縄国際大学非常勤講師の大城尚子さん(41)は「沖縄戦の体験を語り継ぐことについて」の質問との関連で、在沖米軍を「どう思うか」の調査結果を考察する。

 沖縄戦の体験を語り継ぐことについては「もっと」「現在の程度」を合わせると92.4%に達した。初回調査から常に9割前後を維持する。年代別で大きな差はなく、多くの県民が意識を共有している。「もっと」の回答割合に絞れば今回の最多は20代で67.0%だった。

 だが、在沖米軍を「どう思うか」については、20代・30代は「撤去」「縮小」が少なく、「どちらとも言えない」が多い。大城さんは若年層が沖縄戦と米軍基地を切り離して理解しているとして「日本の侵略戦争に『加担した』沖縄の人々の歴史を反省しながら、沖縄戦と米軍基地の関係をつなげて語っていく必要がある」と指摘した。

 自衛隊の質問に対しても「どちらとも言えない」が多く、若年層はその傾向が強かった。「米軍基地に土地を強制収用された住民は共同体を破壊され、再建が難しい状況にある。石垣島や宮古島、与那国島、北大東島、奄美大島での自衛隊基地問題につながる」との見方を示した。
 (仲村良太)
 (おわり)