授乳もオムツ替えも2人分…双子の育児「ひとりで悩まないで」 母親らつながり経験共有


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2021年12月3日に開催された双子会の参加者=浦添市のzero place(高甫さん提供)

 授乳も、寝かしつけも、オムツ替えも、何もかもが2倍。1人が泣いたらもう1人が泣く―。そんな双子ならではの育児を経験している母親同士のつながりが、県内で広がりつつある。

 2021年12月、助産師常駐のラウンジ併設型産後ケア施設「zero place supported by NESCAFE」(浦添市)に、双子とその母親8組が集まり「双子会」が開催された。

 企画したのは、第4子、第5子となる双子を育てる高甫玲美さん(32)=浦添市。「双子は妊娠、出産、育児に至るまで、何もかもが1人と違った。同じような経験をしている仲間で双子の楽しいことも苦しいことも共有して、息抜きや情報交換をしたい」と会の目的を説明する。

 出産後は外出が難しくなりがちで、同じような境遇にいる人とゆっくりと話す機会や場所はあまりない。特に同年代の双子は周囲にいないことも多く、親同士が悩みや不安を共有しづらい。

 双子会は、そうした双子の親同士が交流し、互いに支え合う。現在は高甫さんと同じ産院だった双子の母親のほか、SNSや助産師の紹介を通じて知り合った人など16組ほどがつながっている。双子の出産を控えている母親からの問い合わせもあるという。

高甫玲美さんと子どもたち。(後列左から)高甫さん、長女の莉緒さん、(前列左から)次女の菜々さん、三女の真緒ちゃん、次男の栄悟ちゃん、長男の栄斗さん(高甫さん提供)

 集まり始めたきっかけは、高甫さん自身が21年6月に双子を出産したあと、初めて産後うつになり、人と話したり、頼ったりする大切さを実感したからだ。

 「何かがおかしい」。そう感じたのは、出産後2日目から始まった授乳中だった。授乳すると、これまで感じたことのない気分の落ち込みに襲われた。上の3人の子どもの時には感じたことがなかった。

 「ホルモンバランスが崩れているのかな」。最初はそう思いやり過ごした。当時は2カ月半の管理入院の末、初めての帝王切開での出産を終えたあと。心身共にぼろぼろな状態だった。

 だが退院後は双子の育児に加えほかの子どもの世話や家事に追われ休む暇がなく、精神状態はますます悪化した。特に夕方の空気を感じると気分が落ち込むようになり、外を見ないように、カーテンを閉めた真っ暗な部屋に引きこもって過ごした。感情の起伏が激しくなり、夫や子どもの前で泣いたこともある。

 1カ月検診時に助産師に助けを求め、訪問看護などを利用しながら育児を続けた。だが自宅での高甫さんの様子を見ていた助産師に病院の受診を勧められ、生後3カ月の時に、産後うつと診断された。医師からは管理入院中からうつ状態だった可能性を指摘された。

 現在は精神科と母子支援に特化した訪問看護ステーション「eight(エイト)」(宜野湾市)を週に3回利用し、自身や家族の心身のケアを助けてもらっている。双子会の交流も、日々の心の支えだ。

 つらさを1人で抱え込み、産後うつを経験したからこそ、今双子育児で悩んでいる母親たちには「1人で悩まないでほしい。助けてくれるところはある」と呼び掛ける。「勇気を出して人に頼って、ほどよく手を抜くことも大事。まずは気軽に連絡してほしい」と話した。

 次回の双子会は新型コロナの感染状況を踏まえながら2月か3月に開催予定。問い合わせは高甫さんr.e.e.m.i@icloud.com
 (嶋岡すみれ)