あす告示 コロナ急増で投票率影響も<データで見る名護市長選>


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 任期満了に伴う名護市長選(23日投開票)が16日に告示される。現職の渡具知武豊氏(60)=自民、公明推薦=と、新人の岸本洋平氏(49)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=による一騎打ちの構図が見込まれる。今回は新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るい、かつて経験したことのない選挙戦となる見通しだ。両陣営とも運動が制約を受けており、投票率に影響する可能性がある。これまでの名護市の選挙動向を振り返る。

(22名護市長選取材班)
 

1万7700~1万9500票か 勝敗ライン 基礎票から上積み鍵

 1町4村が合併して名護市が誕生した1970年以降、市長選は今回が14度目(うち2回は無投票)となる。

 米軍普天間飛行場の移設先として市辺野古が浮上したことで、98年以降はその是非を巡って全国的にも注目される地域選挙であり続けている。一騎打ちとなった前回2018年も、両陣営とも市外、県外から国会議員や支援者が続々と応援入りし、壮絶な選挙戦となった。

 そうした特徴を反映してか、有権者の関心も比較的高い傾向を示している。投票率は2000年代に入って80%を割るようになったものの、大幅な落ち込みはなく、10年以降の3度の市長選はいずれも76%台で推移してきた。

 前回18年は76.92%で、県内11市で直近にあった市長選の中では最も高い。

 前回18年の市長選では、2万389票を集めた渡具知武豊氏が市長選史上最多得票を記録した。得票が2番目に多いのは02年に当選した故岸本建男氏の2万356票で、今回はその息子の岸本洋平氏が渡具知氏に挑む構図となる。

 直近にあった21年10月の衆院選の市内有権者数(5万595人)で計算すると、投票率が前回並みなら当選ラインは約1万9500票になる。

 だが今回はコロナという不確定要素があり、両陣営とも有権者とのスキンシップや支持を訴える集会の開催、市外からの運動員の動員などを制限せざるを得ない。

 陣営関係者からは「前回のような運動ができず、投票率も下がりそうだ」との観測も漏れる。仮に70%とすると、当選ラインは1万7700票程度まで下がる。両陣営とも、1万数千票あるとされる基礎票にどの程度上積みできるかが鍵となる。
 

期日前、投票者の57% 前回18年

 名護市の選挙で特筆すべきが、期日前投票の割合の高さだ。

 前回2018年2月の市長選は、票を投じた3万7524人の57.7%に相当する2万1660人が期日前で投票を済ませた。期日前投票は、今や選挙戦を左右する重要な地位を占める。ただ、今回はコロナ感染急拡大の影響が期日前にどう及ぶかも注目される。

 期日前投票制度は04年の参院選で導入が始まった。名護市では17年衆院選で期日前の投票者数が投開票当日を上回り、その後も各選挙で同様の傾向が続く。県内11市で比較しても、名護市の投票者数に占める期日前の割合は高い傾向がある。

 なぜなのか。今回の市長選のある関係者は「米軍基地問題で20年以上賛否を問われ続けてきた。投票先が固まっていて、選挙から早く解放されたいという有権者心理も影響しているのでは」と推論する。

 期日前の割合が最も高かったのは18年9月の県知事選で、投票した有権者の約7割だった。期日前投票への動員は、組織力のある保守系陣営の“お家芸”とイメージされがちだが、特定の政党支持層に限らず、多くの無党派層も期日前期間中に投票所に足を運んでいることがうかがえる。