米軍基地からのコロナ拡大、名護市長選の争点になる? 両陣営が駆け引き


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名護市役所(資料写真)

 16日告示、23日投開票の名護市長選は、現職の渡具知武豊氏(60)=自民、公明推薦=と、新人で市議の岸本洋平氏(49)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=の両陣営が前哨戦を繰り広げる。新型コロナウイルスの「染みだし」が指摘される在日米軍基地の防疫対策や日本政府の対応が全国的に問題を広げる中で、名護市長選でも両陣営の駆け引きが激しさを増している。

 「防疫面でも地域にとって米軍は脅威だ」。在沖米軍基地関係の新型コロナ感染者数が最多を更新し、岸本陣営の関係者は語気を強める。

 これに対し、渡具知氏を推す政権与党は投票行動への影響を最小限にとどめたいとの思いをにじませ、「強い態度で臨む」(政府関係者)と強調する。

 キャンプ・ハンセン(金武町など)での100人規模のクラスター(感染者集団)発生を受け、松野博一官房長官は「米側に感染拡大防止措置の強化などを求めた」と説明。今月10日からは米軍関係者の不要な外出の規制が始まり、陣営関係者は「迅速な対応」と岸田政権の取り組みをアピールする。

 一方、その前日の9日、岸本氏の激励で名護市内を訪れていた玉城デニー知事は取材に応じ、「遅すぎる」と苦言を呈した。基地従業員にオミクロン株の陽性者が出た昨年12月の段階で、県として基地外への外出自粛を日米双方に求めていた経緯を指摘。「迅速な手だてが取られていなかった」と主張した。

 名護市は1998年の市長選以降、四半世紀にわたって米軍普天間飛行場の辺野古移設問題に翻弄(ほんろう)されてきた。市民からは「確かに米軍のコロナ対策は心配」「市長選に絡めるのはぴんとこない」の声が漏れる。

 岸本氏を支援する政党幹部は「沖縄の第6波は間違いなく米軍がきっかけだ。基地のリスクを改めて市民に浸透させることが重要だ」と強調。選挙戦の争点の一つに位置付ける構えを見せる。

 渡具知陣営の関係者の一人は「市民は基地問題を選挙に持ち出されることに疲れている。コロナを基地問題に絡めてもほとんど響かないのではないか」と“争点化”に懐疑的な見方を示した。

 (’22名護市長選取材班)