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大学ハンドで存在感、学生で日本リーグ選手契約 中大2年でジークスター・伊禮雅太<ブレークスルー>


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国内屈指の選手がそろうジークスター東京で鍛錬を積む伊禮雅太=2021年12月22日、東京都江東区のセガサミースポーツアリーナ

 高校時代から高い技術とシュート力で全国的に注目されていたハンドボール男子の伊禮雅太(うた、20)=神森中―興南高―中大2年=が、新たなステージで成長を続けている。中大が2連覇を果たした昨秋の関東学生秋季リーグで優秀新人に選出され、その後の全日本学生選手権では同大40年ぶりの優勝という快挙に貢献。昨年12月には現役学生ながら、多くの日本代表が所属する日本リーグ(JHL)のジークスター東京と選手契約を結ぶなど、存在感が際立つ。
 

■初の日本一

 身長180センチ超の体格に加え、優れた観察眼と多彩なステップで相手ディフェンスを交わし、得点を量産する高い個人技が持ち味。興南高3年の時に主将でエースとして臨んだ南部九州総体では、チームを全国3位に導いた。

 進学先に選んだのは、大学OBで国内トップ選手だった実方智監督の下、近年急激に力を付けている中大。昨夏の東京五輪代表だった部井久アダム勇樹ら現4年生の代を中心に、日本代表選手も多く「いい環境だと感じた」という。守備に注力する興南高で培ったフットワークに加え、「シュートに行くまでの動きや、コース取りなどシュート精度も上がった」と武器の攻撃力に磨きを掛けた。

 1年時はコロナウイルス禍で多くの大会が中止になったが、2年で主力に定着すると関東学生秋季リーグ戦で安定した得点力を発揮。「常にシュートを狙うことと、状況判断を意識していた」と8勝1分けの無敗優勝に貢献した。

 勢いに乗ったチームは全日本学生選手権でも順調に勝ち進んだ。決勝の相手は2大会前の王者、大阪体育大。前半からリードする展開だったが、残り約10分で3点差まで詰め寄られた。ここで勝負強さを発揮した伊禮が2連続得点を挙げ、そのまま逃げ切った。1981年以来の優勝の原動力となり「小中高を含め日本一は初めて。うれしかった」と笑顔で振り返る。
 

■代表選手に刺激

 昨年12月からは、現在日本リーグ12勝3敗で3位に付けるジークスター東京の練習に参加する。昨夏に実方監督から「行ってみるか」と声を掛けられ、「レベルが高いところでプレーできるなら行きたい」と挑戦を決意。大学シーズンのオフ期間を利用してさらなる高みを見据える。

 県勢の先輩で東京五輪代表の東江雄斗や、土井レミイ杏利、五輪を制したフランス代表のリュック・アバロらスター軍団の中でプレーし「当たりの強さや、シュート一本一本の攻め方のレベルが高い。当たりが強い分、距離を取って攻めるなど、キーパーとの駆け引きが大事になる」と刺激を受ける。ポジションが重なる東江や元代表主将の信太弘樹からも「シュートのタイミングや、フリーでボールをもらうための動きを学びたい」と積極的だ。

 共に中大から入団した3年の蔦谷大雅は既に日本代表にも選ばれており、「身近で刺激になるし、自分も頑張らないと、と思う」と好環境の中で精神面も充実している。東江と同様に県勢の先輩であり、代表経験のあるジークスターの東長濱秀希主将(34)も「シュート力があるし、まだ大学2年生。荒削りだけど、成長の具合によっては日本代表に入れる選手だと思う」と期待を寄せる。

 向上心の尽きない20歳のホープが、トップ選手への階段を着実に上っている。

 (長嶺真輝、写真も)