【記者解説】米軍機飛行差し止め、国の責任問う 嘉手納爆音・うるま住民ら提訴


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
米軍嘉手納基地(資料写真)

 米軍嘉手納基地に隣接するうるま市石川の住民を中心とした5028人が、国に米軍機の実質的な飛行差し止めなどを求めて提訴した。28日に提訴される第4次嘉手納爆音訴訟とは別の大規模訴訟だ。

 航空機騒音訴訟をはじめとする公害訴訟で、被害を生じている原因行為の差し止めは被害救済の本質といえる。原告らが飛行差し止めを求めたのは戦後77年、復帰50年を迎える現在も基地被害が放置されている状況に対する切迫感の表れだ。

 米軍基地に関する訴訟で飛行差し止めを認めた判決はない。裁判所は被害が受忍限度を超えているとして損害賠償は認めつつ、差し止めは「米軍基地の運用に国の権限が及ばない」とする第三者行為論で退けてきた。

 差し止めを求めれば訴訟の長期化などの懸念もあるが、原告側は訴状で国の責任を指摘して差し止めを求めた。騒音が生活妨害や健康上のリスクを生じ、憲法で保障された人格権を侵害していると指摘。国に「外交交渉で是正を求めることができる地位にある」として不作為の責任を問うた。

 第3次嘉手納爆音訴訟に関連し、訴訟支援を目的とする基金の管理運営や積み立て方針について弁護団と石川支部の間で意見が異なり、独自の提訴に至った経緯がある。ただ新たな訴訟も被害救済を求める主張の重さに違いはない。国には基地被害を受け続ける住民の訴えに向き合う責任がある。

 (宮城隆尋)