戦後の人々を励ました「サニズ演劇発表会」 西銘研志郎(八重山支局)


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かつてのサニズ演劇発表会の様子=2019年4月、石垣市(提供)

written by 西銘研志郎(八重山支局)

 昨年末から地方面で始まった新企画「わした公民館」。県内各地の公民館を紹介するこのコーナーの担当が回ってきた私は、母の故郷、石垣市宮良集落の公民館を取材した。宮良公民館は私の祖母宅の近所にあり、なじみのある建物だ。だが生まれ育ちは沖縄本島の私にとって、公民館長の話は初めて聞くことばかりだった。

 特に印象深かったのは、青年会が主催する「サニズ演劇発表会」という行事のことだ。これは、地域の若者が集落の人々を楽しませることを目的に、公民館で歌や余興を披露する行事だ。浜下りの時期に開かれるという。コロナ禍の影響で、ここ2年は開催できていないというが、前回2019年が70回目の開催だった。館長によると、戦後、落ち込んだ人々を励まそうと、集落の若者が始めたことがきっかけだという。

 すでに他界している宮良の祖父は、生前、「戦時中は石垣島で従軍していた」と話していた。初年兵だったらしい。仲間は大勢、犠牲になったようだが、祖父は運よく生き延びた。館長の話を聴きながら、生き残れた祖父たち世代が、この行事を始めたのではないかと勝手に想像した。

 コロナ禍の影響で、世界中の人々が落ち込む日が続いている。だがいつの日か、困難を笑顔に変える時が来るのだろう。サニズ演劇発表会がそうだったように。

(石垣市、竹富町、与那国町担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。