「言葉はアイデンティティ」オランダ出身男性、八重山方言を学ぶ 石垣島移住、動画で発信


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八重山方言の学習で使った単語帳を手にするエリック・ファンラインさん。地域に合った発展のためには地域の言葉を残すことが大切だと考えている=15日、石垣市

 【石垣】ユネスコ(国連教育科学文化機関)から消滅の「重大な危機」とされる八重山語(八重山方言)。普及・啓発活動は進められているが、話者が減り継承への課題が指摘されている。そんな八重山方言の習得を目指すオランダ出身の男性が、石垣市に住んでいる。エリック・ファンラインさん(45)だ。ファンラインさんは「言葉は地域のアイデンティティーだ」と学ぶ意義を語る。

 ファンラインさんが石垣島と関わりを持つようになったきっかけは、十数年前にさかのぼる。学生時代に日本に語学留学し、東京の大学院を修了するなど、元々、日本に関心のあったファンラインさん。2004年から東京でサラリーマン生活を始めると、「学生時代から行ってみたかった」という沖縄を旅行で訪れるようになった。そしてその魅力にはまっていった。

 思いは募る。16年に会社を辞め、海も山もあり、離島へも近い石垣島へ移住した。現在は、通訳や観光関連のコンサルティング業などの仕事に就いている。

 八重山方言に触れるようになったのは、石垣島で働く中で出会った人たちの影響だ。新型コロナウイルス感染症の影響で、石垣島を訪れる観光客は減少している。ファンラインさんは仕事を通じて出会った人たちと、インスタグラムを使って八重山の情報を発信する取り組みを始めた。内容はファンラインさんがコミカルに八重山方言を学ぶ動画だ。

 こうした取り組みを進める中で、本格的に八重山方言を学びたいと考えたファンラインさんは、県しまくとぅば普及センターが昨年9月に石垣市内で始めた「しまくとぅば講師養成講座」を受講した。講座は12月まで続き、ファンラインさんはこのほど、講師初級の認定試験を受けた。結果が出るのはまだ先だが、試験前は1日平均2~3時間の勉強を続け「学生時代以来、久しぶりに本格的に勉強した。合格していると思う」と笑顔を見せる。

 ファンラインさんは地域の言葉を学ぶことが地域の特性を生かした発展につながると考えている。「初めて石垣に来た頃に比べると開発が進んでいるが、沖縄本島やハワイと似てきた。だが町中に『おーりとーり』(いらっしゃいませの意味)と石垣の言葉があれば、観光客は石垣に来たことを実感できる。みんなが方言を話せるようになれば、地域に合った発展ができるのではないか」。言葉を守ることが、その地域の“らしさ”を守ることにつながると思っている。

 今後も八重山方言の勉強を続けていくというファンラインさん。石垣らしさを残すため、方言の伝承を目指している。

 (西銘研志郎)