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バスケ国士舘大の1部昇格に貢献「日本一成長できる場に」 アシスタントコーチ・松島良豪<ブレークスルー>


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練習で選手たちに声を掛ける松島良豪AC=2021年12月21日、東京都多摩市の国士舘大学多摩キャンパス(長嶺真輝撮影)

 昨年9~11月に行われた第97回関東大学バスケットボールリーグ戦2部で2位に入り、来季から7季ぶりに国内の大学トップリーグである1部に昇格する国士舘大。原動力の一人となったのが、アシスタントコーチ(AC)を務める元プロ選手でOBの松島良豪さん(29)=沖縄市出身、コザ中―小禄高出=だ。技術指導以上に、選手たちの自主性や判断力の向上に重点を置く。「バスケにしっかり向き合って青春を過ごし、人間性を養ってほしい」。情熱あふれる新米コーチが、人間力の育成を通して成果を挙げている。

 コザ中や諸見小で多くのプロ選手を育てた名将の故・良和さんを父に持ち、学生の頃から指導者を志していた。「父は尊敬できる人だった」と背中を追う。高校で全国を経験し、大学4年時の2013年には主将として国士舘大初の関東1部昇格に貢献。卒業後はBリーグ1部のレバンガ北海道などで活躍し、20年に引退後、母校のACに就いた。他の大学院でバスケに関する研究をしながら、国士舘の非常勤講師として体育の授業も受け持つ。
 

■母校を再建

 沖縄に戻って指導者になる選択肢やプロ球団からスタッフ就任の勧誘もあったが、当時周囲からこんな声が耳に入ってきた。「国士舘がだらしない」。16年から再び関東2部に戻っていたチームの練習を訪れると「だらだらして規律がなく、バスケに向き合っていなかった」と危機感を持った。「大学は人生の分かれ道。人間力を身に付け、仲間と足並みをそろえることができないと社会では通用しない」。母校の再建を決意した。

 日々、学生に問うことがある。「ここに何をしに来たの?」「何のために練習をするの?」。自ら考え、目的意識を持つ習慣を養う。自身が学生時代は「体育館に住んでいる」と言われるほど自主練習に没頭し、プロになってからもムードメーカーとしてコート内外で存在感を発揮した。「指示待ち人間だと人生がおもしろくない。一つの物事に情熱を持ち、周りから必要とされる人間になってほしい」と自主性を求める。

 かつて、競技に取り組むモチベーションが低く「最悪の世代」とまで呼ばれていた現4年生を中心に、チームの雰囲気は徐々に変容していく。一番の変化は「審判に文句を言わなくなった」。練習中から「ここ頑張ろう」「もっと声を出そう」と前向きな言葉が増えた。「自ら考えて自分のことを気付けるようになると他責にしなくなり、状況判断力も身に付く」とプレーにも好影響を与えた。
 

沖縄出身の選手たちと笑顔で肩を組む松島良豪AC(中央)

■三つの「日本一」

 迎えた昨秋のリーグ戦。上位2チームが来季から1部に昇格する条件下で、国士舘は優勝した明治大戦以外は負けなしの10勝1敗で12チーム中2位。ほぼ二桁得点差での勝利と安定していた。選手、コーチとして1部昇格を決める瞬間に立ち会い「試合に出る出ないに関係なく、4年生が一生懸命練習し、チームへの熱量がすごかった。伝えたことを体現してくれた」と選手たちに感謝する。

 今後、リーグ戦や全日本大学選手権で優勝を目指すことに「やるからには当たり前」と言い切る。コーチとして掲げる目標は三つ。「国士舘を日本一成長できる場所にする」「日本一応援されるチームになる」「日本一コミュニケーションが取れるチームになる」。勝ち負けのみにとらわれず、結果に至るまでの過程を大事に学生と向き合い続ける。

 (長嶺真輝)