大龍柱の向きに質問相次ぐ 首里城復元技術検討委が報告会 「相対」の根拠問う声も


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首里城復元に向けた技術検討委員会の報告会に耳を傾ける参加者ら=30日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

 首里城復元に向けた技術検討委員会(高良倉吉委員長)は30日、復元の方向性や経緯を説明する県民向けの報告会を、那覇市の県立博物館・美術館で開いた。会場には80人が参加し、インターネット配信で最大120人が視聴した。会場で回収した質問用紙は20枚以上となった。

 報告の中心となった大龍柱の向きについて高良委員長は、正殿を解体修理した時の公式記録である寸法記(1768年)と尚家文書(1846年)を重要資料として、相対(向かい合わせ)とする暫定の結論を説明した。

 質疑応答では「正面から相対へ、相対から正面になった明確な資料があるのか」との質問があった。

 県立芸術大学名誉教授の安里進委員は「琉球王国末期の写真しかなく、文献資料でもつかめないので絵図などでみている」と話し、時代ごとの絵図の描き方から判断したと説明した。今後、新たな資料が見つかった場合は、現状の分析と異なる可能性があるとした。

 会場から「隔年で向きを変えるのはどうか」との提案も出た。

 高良委員長は「大龍柱がたどってきた時代の変遷や役割は、先人の知恵や営みだ。決着がつかないから勝手に正面や横に変えるのは先人たちに失礼。100%解決できる答えは見つからないが、資料に基づいて向き合う」と強調した。

 報告会に参加した與那嶺貞子さん(65)=那覇市=は「大龍柱の向きについて、すっきりしなかった。もっと(議論に)時間をかけて焦る必要はないのではないか」と話した。(中村優希)