越来グスク整備へ 琉球独自の聖地「アマミクヌムイ」追加指定うけ 沖縄市


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【沖縄】沖縄市城前町の国指定名勝「アマミクヌムイ」の一つである越来グスクについて、市は2022年度内にも整備基本計画を策定する。この地域が19年に琉球独自の特徴を持つ聖地・アマミクヌムイに追加指定されたことを受けた取り組み。越来グスクは戦後の米軍主導による開発で遺構も含めてほとんどが消失したが、1955年に拝所が再建され、地域の祈りの場として住民生活に根付いている。案内板など関連設備を整備した上で、琉球独特の聖地として保護し、その価値を後世に伝える体制づくりを進める。

国の名勝「アマミクヌムイ」に指定されている越来グスク跡の拝所=1月26日、沖縄市城前町の城前公園

 「アマミクヌムイ」は世の始まりに天から降り立った「アマミキヨ(アマミク)」が沖縄各地につくったとされる伝承の聖地。琉球国がまとめた「おもろさうし」や「中山世鑑」などに記された聖地を県が候補に選び、国が名勝として指定を進めてきた。「ムイ」は岩山など高く盛り上がった場所を示す琉球語。県の調査研究では、11地域・13カ所のアマミクヌムイが特定されている。

 沖縄市立郷土博物館によると、現時点では消失した越来グスクを復元できるような史料がないため、復元は予定していない。南城市の斎場御嶽など、県内の他のアマミクヌムイとの関係も描きながら、越来グスクの歴史的価値を伝える取り組みを検討する。越来グスク跡の拝所がある城前公園や現在さら地となっている越来保育所跡地を整備したい考え。

 博物館の縄田雅重文化財係長は「アマミクヌムイはまだ知る人が少ない名勝だ。アマミクヌムイとしての越来グスクの周知、理解の促進を目指す」と話した。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの技術を活用し、消失した越来グスクからの景色を仮想体験できるようなソフト面の取り組みも検討していきたいと話した。

 越来グスクの拝所に公民館が隣接する城前自治会の新里賢一会長は「越来グスクは尚泰久や尚宣威らが王子時代に領有した存在感の大きいグスクだ。なくなってしまったが、アマミクヌムイの紹介を通して越来グスクの価値を発信する計画に期待している。隣接する公民館とも一体で、博物館や資料館の整備もできればいい。後押しする組織も立ち上げていきたい」と期待した。
 (島袋良太)