石原慎太郎さんと沖縄の関わりは 尖閣諸島の購入を計画、離島舞台の小説も


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【東京】東京都知事や作家として政界、文学界で活躍した石原慎太郎さんは、沖縄にも関わりがあった。都知事在任時の2012年には、石垣市の尖閣諸島の購入計画を発表したことが波紋を広げ国有化への流れを決定づけた。沖縄の離島を舞台にした小説「秘祭」は、県出身監督の手で映画化された。

 石原さんと尖閣との関わりは国有化前の1997年にさかのぼる。衆院議員ら約30人とともに同年4月に上陸計画を発表。5月、クルーズ船に乗船した石原さんらのサポートを受け、新進党(当時)の西村真悟衆院議員、仲間均石垣市議ら4人が魚釣島に上陸した。

 都知事就任後の2012年4月には、米国での講演で東京都による尖閣の購入計画を明らかにし、資金捻出のための基金を設立した。13年1月までに集まった寄付金は14億8520万円。都によると、このうち一部が現地調査や啓発活動のために使われたが、現在も14億1298万円が残されており、使途は決まっていないという。

 運輸相(当時)時代には、新石垣空港の白保への建設計画に環境面への影響の懸念などから難色を示した。国会答弁でも異論を唱え続けたことで、政府与党内での議論が紛糾し、その後の候補地変更につながった。

 八重山を度々訪れ、島々に伝わる祭りに興味を引かれていたという。那覇市出身の新城卓監督がメガホンを取り、1998年に公開された映画「秘祭」は沖縄本島や八重山で撮影され、リゾート開発を拒み、秘祭を守る島人の姿を描いた。

 原作者として自ら脚本も手掛け、映画パンフレットに「強烈な文明批判としての沖縄の存在」と題する一文を寄せた。著書「わが人生の時の時」には沖縄でのダイビング体験を基にした短編小説が収録されている。

 石垣市の中山義隆市長は「都知事時代に尖閣について話をし、折に触れて連絡を取っていた。政治家としての意識を教えてもらい、死去は非常に残念だ」と悼んだ。 (安里洋輔まとめ)