負の連鎖断ち切る 若年妊産婦の支援、親の所得向上に注力 沖縄県「子どもの貧困対策」新素案


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 子どもの貧困問題を解決するため、2022年度から26年度まで県が実施する新たな子どもの貧困対策計画(素案)では、従来計画では把握できなかったヤングケアラーの実態調査を来年度に行うとした。県は貧困対策を推進する基金を30億円以上積み増す予定で、貧困の世代間連鎖を断ち切るため、妊産婦の支援や所得向上に関する事業など、県内各部局が取り組む施策を新計画に盛り込んでいる。

 2016~21年度の貧困対策計画の最終評価報告書では41指標中、達成は12指標、改善は25指標、横ばいは1指標、後退が3指標だった。ただ、同指標には、家事や家族の世話を担う18歳未満の「ヤングケアラー」の実態把握が無かった。

 そのため、県青少年・子ども家庭課は昨年、小学5、6年と中学高校の教職員向けに調査を行っており、今月にも結果を発表する予定。次年度には、国の補助事業を活用し、児童生徒向けの調査も行うという。実態把握後は、子ども未来政策課が対応予定で、個別の家庭状況に対応できるヘルパーなどを派遣する事業を想定しているという。

 新計画では、子育てが始まる妊娠・出産期の支援にも力を入れている。県によると、県内女性が10代で出産する割合は全国の2・4倍になるという。若年出産は貧困の一因になる可能性があり、親1人で育てる場合は長期の支援や居場所が必要となるため、地域保健課は本年度から若年妊婦支援事業を実施している。同事業では、日常的に利用するSNSを活用し、悩みや不安を抱える妊産婦を支援に結び付けている。新たな貧困対策計画では、同事業の成果が出るとして、施策に盛り込まれたという。

 貧困に影響する親の所得の向上に向けた「所得向上応援企業認証制度」(仮称)は、県内企業の代表らで構成する「稼ぐ力に関する万国津梁会議」が県に提言。認証企業へのインセンティブを与える仕組みで、所得向上が県経済を循環させるとともに貧困の解決にもつながる認識を広げるため、次年度の創設を検討している。

 (嘉陽拓也)