不在続きだった「ツカサンマ」6年ぶりに誕生 宮古・池間島の神事担い手 伝統継承に期待


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池間島のウハルズ御嶽で引き継ぎニガイをする新旧のツカサンマら=1日、宮古島市平良の池間島

 【宮古島】宮古島市平良の池間島で島の神事をつかさどるツカサンマ(司母)が6年ぶりに誕生した。旧正月の1日、島のウハルズ御嶽で新旧ツカサンマによる引き継ぎニガイ(願い)と正月ニガイが執り行われた。ツカサンマらは厳かな雰囲気の中、新しいツカサンマの誕生を神に報告し、島の1年の平安や豊漁、豊作を願った。

 ニガイは1日午前8時から始まった。決められた衣装に身を包んだ新ツカサンマらは、作法にのっとり素足で御嶽に入るとすみずみまで素手で清めた。旧ツカサンマの指導を仰ぎながら、たばこをくゆらせて神に合図し、丸1日かけて祈り、酒や米、唄と踊りをささげた。

 池間自治会によると池間島の祭祀(さいし)は、古くから「ホォンマ」を先頭に「カカランマ」「ナカランマ」「アニンマ」「ウットゥガンマ」の5人のツカサンマがそれぞれの役割を担い、執り行われてきた。

 ツカサンマの任期は3年で、集落に住む51~55歳の女性からツカサユリ(神降ろし)で選ばれる。神降ろしも御嶽で行われ、対象となった女性たちの氏名が書かれた紙を盆にのせて揺らし、7回落ちた順に5人がツカサンマになる。だが、近年はなり手がなく伝統神事の継承が難しくなっていた。

ニガイを前に香炉を素手で清めるツカサンマら

 なり手不足の背景には、ツカサンマになるとさまざまな制約があることも関係している。任期中は集落の外に出られなかったり、着衣の色なども決められていたりした。神降ろしで選ばれても断られるなどで不在が続いていた。

 「島の祭祀を守りたい」との強い思いから自治会ではなり手の基準を40~60代も対象にするなど緩和し、今回、6年ぶりに新しく誕生させることができた。

 新ツカサンマとなったのは「ホォンマ」に久貝理恵さん。「カカランマ」に新崎あや子さん。「ナカンマ」に真栄里春美さん。「アニンマ」と「ウットゥガンマ」は不在のまま。

 自治会の仲間広二会長は「ようやく新しいツカサンマが誕生してうれしい。祭祀は島にとって本当に大切なことだ。時代の変化に合わせていくことでこれからも守り続けていきたい」と語った。

(佐野真慈)