【記者解説】過去最大の県予算、国の沖縄関係予算は大幅減 目玉事業の戦略打ち出せず


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県の2022年度当初予算案が過去最高の8千億円台を突破したのは、新型コロナウイルス対策関連の財政支出が国から見込まれることに加え、コロナ禍でも業績を上げた企業などからの法人税収の増加があったからだ。自主財源が増加したことで、「県子どもの貧困対策推進基金」に57億円を積み増すほか、貧困に陥りやすいひとり親支援や18歳未満の「ヤングケアラー」を支援する施策を拡充した。

 玉城デニー知事にとって1期目の最終年度となり、「誰一人取り残さない社会」の実現を目指す方針を反映した予算編成となった。また、国の施策を反映してデジタルトランスフォーメーション(DX)化に向けた人材育成事業予算も多数計上した。

 一方、国の22年度沖縄関係予算案が前年度比約330億円の大幅減となる約2680億円に切り込まれたことを受け、道路や学校建設などのインフラ整備に要する県の「投資的経費」はここ10年で最も低い1137億円となる見込みだ。

 政治状況に左右される「沖縄振興体制」の下、県の22年度当初予算は、ハード関連の国庫支出金の大幅減を新型コロナ対策費などのソフト事業の増額で補う形となった。

 玉城知事は沖縄関係予算の大幅減で基盤整備や研究開発支援事業は規模を縮小し、道路整備には遅れが生じる見込みと説明した。「少ない予算の中でどこに注力していくかをしっかり協議してきた」と強調した。

 今年は沖縄の日本復帰50周年の節目だが、本島の南北を貫く鉄軌道の整備など今後の沖縄社会を劇的に変えるような目玉事業や戦略は打ち出せなかった。
 (梅田正覚)