【深掘り】知事「怒りを禁じ得ぬ」…市街地を飛ぶ那覇軍港訓練 国は「把握せず、中止要請せず」


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那覇軍港

 在沖米海兵隊が7日に発表した輸送ヘリコプターやMV22オスプレイなどの飛来を伴う那覇港湾施設(那覇軍港)での新たな訓練は、沖縄周辺での演習激化や頻発する低空飛行など基地の自由使用に輪を掛けるものだ。那覇軍港での航空機運用の常態化につながりかねず、市街地や那覇空港などと隣接する区域の危険度が増す。米軍は県の中止要請の受け入れを拒否し、日本政府も「米側に訓練中止を申し入れることは難しい」(小野功雄沖縄防衛局長)との容認姿勢を示す。日米双方が地元の中止要請をほごにし、訓練は強行される見通しだ。

 在沖米海兵隊は昨年11月、那覇軍港にMV22オスプレイなどを飛来させていた。その際は機体の輸送船への積み込みなど港湾機能の利用が目的だったが、今回は「人道支援や大使館補強、非戦闘員避難」を目的とした訓練となる。

 謝花喜一郎副知事は沖縄防衛局などへの申し入れで「沖縄が戦争に巻き込まれることを連想させる」と抗議した。

 米軍は那覇空港を管轄する大阪航空局那覇空港事務所には事前調整をしていた。同事務所は琉球新報の取材に「民間機に影響が出ないように管制する」と述べた。

 一方で、那覇市への連絡はなく、城間幹子市長は「那覇軍港は多くの民間機が発着する那覇空港に近接しており、市民、県民をはじめ観光客などの安全性を脅かすもので到底容認できない」と危機感を示す。

 1972年の沖縄の日本復帰時に日米間で在沖米軍基地の使用条件を定めた「5・15メモ」では、同施設の主目的を「港湾施設および貯油所」としている。県はこの規定を根拠に、昨年11月のオスプレイなどの飛来以降、航空機の使用に反対してきた。

 一方で同協定は県民の頭越しに決定され、締結当時は非公開だった経緯もある。県関係者は沖縄防衛局がメモについて「航空機訓練は排除されていない」としていることに触れ、「いかようにも読めるということだ。50年前の協定で、現状にそぐわない面もある」とし、より厳しい協定の必要性に言及した。
 (塚崎昇平、伊佐尚記)

知事「断じて容認できず」
 

米軍機を使った訓練を那覇軍港で実施するとした米海兵隊の発表を批判する玉城デニー知事=7日、県庁

 米海兵隊が那覇港湾施設(那覇軍港)で垂直離着陸輸送機MV22オスプレイなどを使った訓練を予定していることを受け、玉城デニー知事は7日、記者会見で「県民に新たな形で基地負担を強いることになり、断じて容認できない」と語った。沖縄防衛局などが訓練予定を把握していなかったとしていることも批判した。

 昨年11月にオスプレイが那覇軍港に飛来した際に、那覇軍港で航空機の離着陸を一切しないよう求めていたとし、「われわれの要請をないがしろにしている」と批判した。沖縄防衛局が訓練予定を把握していなかったことには、「危機管理上も甚だ問題だ。政府は基地提供者として職務を果たすべきではないか。怒りを禁じえない」と述べた。

 市街地に隣接しており、多数の民間機が離着陸する那覇空港に近いことからも、飛来を問題視した。
 (明真南斗)