【記者解説】米軍は使用目的を拡大解釈…那覇軍港訓練、常態化なら新たな基地負担に


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米軍那覇港湾施設で鉄条網を設置する米兵=8日午後、那覇市

 在沖米海兵隊が8日から那覇港湾施設(那覇軍港)で始めた訓練は「人道支援、大使館補強、非戦闘員避難」を目的に掲げている。日米双方が施設の使用目的を拡大解釈し、通常の港湾の機能とは直接関係のない訓練利用をなし崩しで始めた格好だ。遊休化していた那覇軍港の運用体制が変化して市街地での演習が活発化するようになれば、沖縄全体の新たな基地負担につながる。

 異例となる那覇軍港での今回の訓練は、政情不安定な国からの米国人退避などが念頭にありそうだ。台湾やウクライナなどの情勢緊迫など、国際情勢も影響している可能性がある。在沖米軍に配備されていないCH47大型輸送ヘリの使用も予定されており、在沖米軍外からも部隊が参加する見通しだ。

 沖縄国際大の前泊博盛教授(安全保障論)は那覇市街地や那覇空港などに近接する那覇軍港の立地に着目。米軍が非戦闘員避難の訓練地として、本島中北部の演習場ではなく那覇軍港を選んだ意図を「市街地からの米国人救出を想定しているためだろう」と分析する。

 日米が在沖米軍基地の使用主目的を定めた「5・15メモ」は那覇軍港について「港湾施設および貯油所」とする。港湾機能とは異なる航空機の離着陸や演習目的の利用は5・15メモから逸脱しており、県はオスプレイなどを一切飛来させないよう抗議している。

 これに対し、在沖米海兵隊は県への説明で、那覇空港に近接する那覇軍港での離着陸について「主要道路や国際空港の近くで、航空機の飛来が与える影響は少ない」と正当化している。

 日本政府も、岸信夫防衛相が8日の会見で、那覇軍港での航空機訓練について「使用主目的に沿う」と容認した。日本政府が5・15メモの拡大解釈で訓練を容認したことで、米軍が同施設への航空機飛来を常態化させる懸念がある。

 5・15メモが米軍運用の歯止めにならない現状を露呈している中、米軍の無秩序な運用に歯止めを掛けるため、県や地元市町村を交えてより厳しい基地使用のルール制定が必要となる。
 (塚崎昇平)