アクセやジュエリー、島の心をワイヤーアートで 名護の比嘉さん 海外にも出展


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【名護】名護市大東でアトリエ「Chay」を経営する比嘉明美さん(54)=今帰仁村出身=は、自身のワイヤーアートを国内だけでなくスイス・チューリッヒや香港、台湾など海外の美術展に出展している。名護を拠点に活躍する比嘉さんは「沖縄の自然など、身の回りのものの小さな変化をありのままに受け止めつつ表現できれば」と話した。

スイス・チューリッヒの展示会などに作品を展示している比嘉明美さん=4日、名護市大東のアトリエ「Chay」

 比嘉さんがワイヤーアートを始めたのは20代の頃だ。幼い頃から絵やデザインが好きだった比嘉さんは、購入した衣服などに付いている宝飾品を見て「自分ならもう少しこうしたい」と独自のデザインを考えるようになった。頭の中で浮かんでくるアイデアを形にしてみようと、名護市内の量販店で針金と電気工具を購入し、見よう見まねで作り始めた。

 当時の比嘉さんの本業は団体の臨時職員。名護商工高校でパソコンを学んでいた比嘉さんは勤務先からホームページ(HP)制作を任された。

 当時はインターネット黎明期(れいめいき)で、HPを持っているのは大企業などに限られていた。「失敗するのも怖かったので、まずは試作で自分のHPを立ち上げた」と振り返る比嘉さん。1996年に開設したHPに何か掲載する物が必要だと感じ、インスタントカメラで撮った自作のワイヤーアクセサリーをスキャンして掲載した。天然石をはめ込んだオリジナルのワイヤージュエリーはネット上で徐々に話題になり、購入の問い合わせなどを受けるようになった。

 全て独学だが、細部にこだわった精巧な作品は高い評価を受け、雑誌などの媒体で紹介されるように。2005年には東京で開催された展示会「Life is art 2005 Blue blue」(主催・美研インターナショナル、後援サンマリノ共和国大使館)でアーティストの石井竜也さんとのコラボレーションが実現した。

比嘉さんの作品を鑑賞する来場者ら=2021年10月、スイス・チューリッヒ(ART INTERNATIONAL ZURICH 2021の報告書より)

 2016年からはワイヤーアクセサリーにとどまらず、幅広くアート作品を製作し始めた。海外の展示会に出展する知人の強い後押しなどを受けて海外の展示会主催者に作品の写真を送ると、高評価を受けた。17年から毎年、「アート・インターナショナル チューリッヒ」のほか、香港や台湾の美術展にも出展している。

 21年10月に開催されたアート・インターナショナル・チューリッヒの報告書は「比嘉氏の作品の前に初日から多くの方が集まった。コレクターや画廊、美術学生などが繊細な描写とともにそこから関連付けられる文化的背景を感じていた」と紹介した。

 海をイメージした「オーシャンカレント」、ステンレス板に枯れ枝を差し込んだ「落ち葉」、さまざまな色が調和した美しさが目を引く「島(琉球国)の心」など数多くの作品を制作している比嘉さん。「全く想像しなかったことの連続だが、後押ししてくれた人や物事に感謝している。これからも心に浮かぶメージを作品に反映させたい」と語った。

(松堂秀樹)