大学在学中に結婚し、息子を出産した沖縄大学生の津波葵さん(21)と樹(いつき)さん(21)夫妻が3月、4年間の大学生活を終えて卒業する。2年生の時に妊娠が分かり結婚。3年生だった2020年5月に陽翔(はると)ちゃん(1)が生まれた。出産と育児を担いながら授業はほとんど休むことはなく、時には陽翔ちゃんも一緒に授業に参加するなど、学校側や他の学生も2人を温かく見守った。津波夫妻は「学生は産休も育休もない分、周囲の理解と協力が絶対に必要。支えがあったから子育ても学業も両立できた」と笑顔で感謝を語った。
2人は経法商学部商学科に在籍。妊娠が分かった時は「うれしさでいっぱいだった」という夫の樹さんのそばで、葵さんは「正直、うれしさと不安が半々だった」という。「出産と育児で学業が続けられなくなったらどうしようと心配になった。子どもは絶対に産みたい。だからこそ大学は早く卒業して働きたいと思った」。互いの両親も理解を示し、結婚。双方のゼミの教授にも事情を説明した。教授らは、教室に近い駐車場を確保してくれて、他の教職員に理解と協力を呼び掛けてくれた。
大学は新型コロナの影響で、20年4月からリモート授業に切り替わった。葵さんは「リモート授業だったからこそ子育てと学業を両立できたと思う」と振り替える。
樹さんは若年出産の課題を考えるようになり、10~20代の学生で出産をした4人に聞き取り調査を実施した。そのうち1人は経済的な課題や周りの協力体制などが原因で退学していた。樹さんは「若年出産は貧困と結びつけられるなどマイナスのイメージで語られがちだ。自分は陽翔と出会えて良かった。でもそう思えるのもサポートがあったから」と語る。
2人の姿は教授らにも影響を与えた。同学部の島袋隆志教授は「大学に保育の設備を設けることや、休学後の学び直しのサポートなどを構築する必要性を考えさせられた」と話す。成定洋子教授は「過去には出産後、退学した学生もいた。今の大学は妊婦への配慮とサポート体制がない。リモート授業だと参加できることも参考になった。大学が変わるべきだと突きつけられた」と語った。
2人は県内企業への就職も決まっている。葵さんは「家族と大学の先生たちには感謝の気持ちでいっぱいだ。卒業が待ち遠しい」と笑顔を見せた。
(嘉数陽)