【詳報】石垣市長選の公開討論会 砥板氏と中山氏 陸自配備計画、ゴルフリゾート開発は?


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 【石垣】27日投開票の石垣市長選立候補予定者による公開討論会(八重山青年会議所主催)が4日、石垣市民会館で開かれた。討論は新人で市議の砥板(といた)芳行氏(52)と4期目を目指す現職の中山義隆氏(54)=自民、公明推薦=の順で交互に発言した。互いに質問し合う「クロストーク」などへの回答では、市内への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の実施や、ゴルフリゾート開発への考え方などで、立場の違いが鮮明になった。両者の発言を詳報する。(西銘研志郎)


砥板芳行氏 開かれた市つくる ゴルフ場の環境負荷深刻
 

砥板芳行氏

 砥板氏は出馬理由について、離島であるために山積する課題の解決を目指すためと説明した。「市民との対話でつくる開かれた石垣市を基本理念としている」という。

 重要政策には「本土や本島と変わらない医療・福祉サービス、教育を受けられるよう格差を解消する」と掲げた。このほか「地産地消を向上し、地元企業との連携や人材育成で質の高い観光をつくる。自然環境を保護する」などとも述べ、市内の大型リゾート開発の検証が必要だと訴えた。

 コロナ禍収束後の取り組みについては、支援策が行き届いていない業種や人々への実態調査の必要性を訴えた。また、近隣諸外国への観光プロモーション実施を目指すとした。

 現在の陸自配備計画へは「世論は二分されており民意を諮る必要があるので、住民投票条例を提案したい。カンムリワシ保護条例制定も検討したい」などと語り、市長提案で住民投票を実施すると明言した。

 尖閣諸島を巡る対応については「国際法上、歴史上、わが国固有の領土で、市の行政区域であることは間違いない。これを国際社会に発信し、国との連携を強化する。政治的な思惑で、調査を強行するような行為は厳に慎むべきだ」と中山氏を批判した。

 クロストークで、中山氏からゴルフ場設置についての考えを問われると、「市民の健康増進の観点から市内にゴルフ場は必要だ。だが現在、計画が進められている前勢岳(まえせだけ)周辺でのゴルフ場計画は、リゾートホテル開発がメインだ。ゴルフ場だけではなく、ホテルから発生する環境負荷が深刻だ」と主張した。

 最後に「現在の市政は独善的で市民との対話が少ない。市民の手に市政を取り戻し、開かれた石垣市をつくりたい」と訴えた。
 


中山義隆氏 島に活気取り戻す 環境と発展の両立を 尖閣周辺調査に取り組む
 

中山義隆氏

 出馬の動機について中山氏は「コロナ禍で観光客数が落ち込み、経済が困窮している。3期12年で一区切りだと思っていたが、八重山の経済、市民の生活環境を取り戻すため、市長として頑張りたい」と語った。

 重要政策には(1)コロナ禍からの脱却、経済の回復(2)子育て環境、子育て支援政策のさらなる拡充(3)強い地場産業の育成―を掲げた。

 またコロナ禍収束後の取り組みについては「3月中に希望者ほぼ全員へのワクチン接種を終えられる。4月には観光プロモーションを実施したい。5月の大型連休には観光客を呼び戻し、島の経済が元気を取り戻すことを目指す」とビジョンを説明した。

 環境保全と経済成長の両立については、「観光客が市に長期滞在し、さまざまな体験にお金を落とすことで経済発展につながる。環境保全と発展は相反するものではない。バランスが必要だ」と答えた。現在の陸自配備計画に関しては「配備予定地近くで、カンムリワシの繁殖が阻害されているとは考えていない。住民投票は市長提案、住民提案、議員提案があるので、それぞれで取り組んでもらいたい」と述べた。

 また、尖閣諸島に関する市の対応を問う質問には「尖閣諸島周辺では漁ができる。周辺海域の調査など、行政にできることに取り組みたい」と語った。

 クロストークでは「『ちゅらさん』ブーム時には、観光客がツアーで押し寄せ、離島をベルトコンベヤー式に回っていたが、『見て、食べて、帰るだけ』の観光では、観光客は島の魅力を感じられない。質の高い観光で、観光収益が上がる」と観光の質向上の必要性を主張した。

 最後は「一日も早い経済回復を目指し、島に活気を取り戻したい」と経済回復を訴えた。