玉城デニー知事 22年度県政運営方針の詳報(概要版)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
県議会で県政運営方針を表明する玉城デニー知事=15日

 ■県政運営に取り組む決意について

 2022年は本土復帰50周年の節目の年です。本土復帰後、県は5次にわたる沖縄振興計画などにより、社会資本整備は着実に進み、観光・リゾート産業や情報通信関連産業の成長などさまざまな成果を上げてまいりました。

 一方で、1人当たり県民所得が全国最低の水準にあるなど、自立型経済の構築はなお道半ばにあるとともに、離島の条件不利性、米軍基地問題などの沖縄の特殊事情から派生する固有課題に加え、子どもの貧困の問題、雇用の質の改善など、重要性を増した課題や新たに生じた課題なども明らかとなっております。

 復帰50年の節目の年にスタートする「新たな振興計画」においては、県民が「安全・安心で幸福が実感できる島」の形成を施策展開の基本的指針として掲げるとともに、持続可能な開発に向けて全ての国が取り組む国際社会全体の共通目標であるSDGsを取り入れ、社会・経済・環境の三つの枠組みに対応する形で、「誰一人取り残すことのない優しい社会」の形成、「強くしなやかな自立型経済」の構築、「持続可能な海洋島しょ圏」の形成の基軸的な三つの基本方向を示しております。

 この基本方向を踏まえ、「離島・過疎地域における安全・安心の確保と魅力ある生活環境の創出」、「世界から選ばれる持続可能な観光地の形成と沖縄観光の変革」、「世界に誇れる島しょ型環境モデル地域の形成」など、沖縄の地域特性やソフトパワーなどを生かし、さまざまな施策展開を図ってまいります。こうした施策展開により、「2050年カーボンニュートラル」の実現や「海洋立国」、「観光立国」の展開などわが国の発展にも寄与してまいります。

 1971年11月に、沖縄の本土復帰に当たり作成された「復帰措置に関する建議書」においては、県民の福祉を最優先に考え、地方自治権の確立、反戦平和、基本的人権の確立、県民本意の経済開発などを骨組みとするあるべき沖縄の姿を求めた新生沖縄像が描かれております。復帰50年の大きな節目となる本年は、今後50年先を見据え、これまでの沖縄のあゆみや発展等を振り返り、先人たちが将来を担う子や孫たちのために描いた新生沖縄像と現状とを比較し、建議や宣言のあり方について検討してまいります。

 復帰50周年記念事業として「記念式典」や「美ら島おきなわ文化祭2022」、「第7回世界のウチナーンチュ大会」などを開催します。
 さらに、戦後75年余りが過ぎ、戦争を知らない世代が大半を占めるなど悲惨な体験の記憶が薄れていく中で、沖縄戦の実相や教訓を正しく次世代に伝えるため、第32軍司令部壕の壕内および周辺の環境調査など、保存・公開に向けた取り組みを加速していくこととしており、さまざまな記念事業を通じて、沖縄のこれまでの発展のあゆみや将来の可能性を国内外に発信してまいります。

 私は「時代を切り拓き、世界と交流しともに支え合う平和で豊かな『美ら島』おきなわ」の創造を基本理念とする「沖縄21世紀ビジョン」において掲げる、県民が望む五つの将来像の実現を図り、本県の自立的発展と県民一人一人が豊かさを実感できる社会の実現に向けて、全身全霊で取り組んでまいります。

 私が県知事に就任して3年余りが経過しました。私が掲げた公約については、その全てに着手し、「新時代沖縄の到来」「誇りある豊かさ」「沖縄らしい優しい社会の構築」の視点の下、子どもの貧困や人権問題など、全ての人の尊厳を守り共生する社会づくりに向けた取り組みや米軍基地問題などさまざまな施策を展開してまいりました。

 誰一人取り残さない社会の実現に向けては「子どもの貧困対策」を県政の最重要政策に掲げ、「県子どもの貧困対策計画」に基づく取り組みを着実に推進するとともに、幼児教育の無償化やこども医療費助成の拡充、中高生のバスの無料化、少人数学級の対象拡大、ヤングケアラーの実態調査の実施など取り組みを進めております。

 加えて、万国津梁(しんりょう)会議については、米軍基地問題や児童虐待、SDGsなどの八つのテーマに関する会議を設置し、提言については、子どもの権利尊重条例の制定、「SDGs実施指針」の策定などに反映しております。また、米軍基地問題に関しては、会議の提言を踏まえ、21年5月に「本土復帰50年に向けた在沖米軍基地の整理・縮小についての要請」を日米両政府に対して行いました。各会議からの提言については、「新たな振興計画」などに反映するとともに、引き続き新時代沖縄の構築に向け、さらなる政策の推進を図ってまいります。

 2020年2月に新型コロナウイルスの感染者が確認されて以降、県においては切れ目無く対策を実施してきました。今回提案する補正予算と当初予算において1777億円のコロナ対策費予算を計上しているところです。引き続き、感染拡大防止と県民生活の安定、経済の回復に向け、全庁一丸で取り組みます。

 また、昨年は、小笠原諸島近海の海底火山噴火に由来するとみられる軽石が県内に漂着したことにより、水産業や観光業、離島航路等船舶の航行などに大きな被害が生じるなど、例年にも増し困難に見舞われました。このため、県においては、県軽石問題対策会議を編成し全庁的に対応する体制を整備するとともに、補正予算により軽石の回収などに取り組んできました。引き続き、国や関係機関と連携しながら、全庁挙げて回収作業や軽石の利活用などに取り組んでいきます。

 今、社会や経済は、これまでの想定を超えた事象が起こっており、危機管理体制の強化が重要であるとともに、東日本大震災や西日本豪雨災害などの教訓を踏まえ、地震および津波や大型台風などの大規模災害の発生を想定した防災・減災対策が求められています。

 このため、県においては防災および危機管理の体制強化を図るとともに、拠点となる「県防災危機管理センター」の整備や消防防災ヘリの導入推進、県民や本県を訪れている観光客への迅速な情報提供、県内外への適切な情報発信など、防災・危機管理体制の強化を推進してまいります。

 加えて、口蹄疫、豚熱、高病原性鳥インフルエンザなどの特定家畜伝染病の侵入防止に向け、各関係機関連携による危機管理体制の強化、畜産農家の飼養衛生管理基準の順守が図られるよう取り組んでいきます。

 県民は、50年前、本土復帰によって米軍基地も「本土並み」になるものと期待しておりました。しかし、復帰前に建設された米軍基地の多くが、今でも沖縄に存在し続けており、米軍専用施設面積が復帰当時の2万8千ヘクタールから現在の1万8千ヘクタールへと33・7%減少したものの、依然として全国の70・3%が本県に集中しております。私は、沖縄の過重な基地負担を軽減するためには、普天間飛行場代替施設の県内への新たな提供を除き、既に日米両政府で合意されたSACO最終報告および再編に基づく統合計画で示された嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還を確実に実施していただく必要があると考えます。

 しかし、SACO合意から25年、在日米軍再編計画の合意から15年が経過し、統合計画による返還が全て実施されたとしても沖縄の米軍専用施設面積は全国の69%程度にとどまり、復帰時に期待したいわゆる「本土並み」には依然としてほど遠い状況にあります。

 普天間飛行場、嘉手納飛行場やその他の訓練場の周辺住民は、昼夜を問わない訓練により、騒音や排気ガスの悪臭などに苦しめ続けられています。このことから私は、昨年5月に日米両政府にさらなる在沖米軍基地の整理・縮小を要請したところであり、引き続き両政府に対し、「当面は在日米軍専用施設面積50%以下を目指す」とする具体的な数値目標の設定と実現を強く求めてまいります。

 普天間飛行場の一日も早い危険性の除去と早期閉鎖・返還は県民の強い願いであります。一方、政府が唯一の解決策とする辺野古移設については、軟弱地盤の存在が判明し、提供手続きの完了までに約12年を要するとされ、さらに、今般の変更承認申請が公有水面埋め立て法に照らした厳正な審査の結果、不承認となり埋め立て工事全体を完成させることがより困難な状況となりました。

 県としては、辺野古移設では普天間飛行場の一日も早い危険性の除去にはつながらないと考えており、政府に対し、対話によって解決策を求める民主主義の姿勢を粘り強く求めていくとともに、普天間飛行場の速やかな運用停止を含む危険性の除去、県外、国外移設および早期閉鎖・返還と辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向けて、諦めず、ぶれることなく、全身全霊をもって取り組んでまいります。

 ■今後の沖縄振興に向けた取り組み

 22年度は、新たな振興計画がスタートする意義深い年です。「沖縄21世紀ビジョン」で掲げる五つの将来像の実現と四つの固有課題の解決を図り、本県の自立的発展と県民一人一人が豊かさを実感できる社会の実現を目標とし、公約に掲げた「新時代沖縄」「誇りある豊かさ」「沖縄らしい優しい社会」の実現に向け、新たな振興計画を踏まえながら、諸施策を展開してまいります。

 「新時代沖縄の到来―経済分野」について、申し上げます。デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進については、「県DX推進計画」を策定し、民間の力も活用した上で、行政分野、生活分野など、さまざまな領域でDX施策に取り組みます。MICEの振興については、産学官連携による国内外のMICE誘致や受け入れ体制の強化などに取り組むとともに、マリンタウンMICEエリアにおいては、大型MICE施設整備と、MICEを中心とした魅力あるまちづくりを推進し、東海岸一帯の活性化に向けて取り組んでまいります。

 また、国際競争力の高い魅力ある観光地の形成を図るため、県観光振興基金を設置し、本県のリーディング産業である観光産業のさらなる振興に取り組んでまいります。鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入に向けては、県民一丸となった機運醸成を図り、国に対し、鉄軌道の持続的運営を可能とする特例制度の創設を求め、早期導入に取り組んでまいります。

 「誇りある豊かさ―平和分野―」について申し上げます。広大な米軍基地の存在が本県の振興を進める上で大きな障害となっていることから、日米両政府に対して、在沖米軍基地の整理・縮小を強く求めてまいります。また、日常的に発生する航空機騒音をはじめ、自然環境の破壊、航空機事故のほか、米軍人・軍属などによる事件・事故などが、県民生活にさまざまな影響を及ぼしていることから、基地の提供責任者である国において適切に解決されるよう求めてまいります。特に、PFOSなどによる地下水など汚染については、県民の健康に関わる極めて重要な問題であることから、情報の提供、基地内への立入調査および対策の実施を日米両政府に対し求めてまいります。

 加えて、昨年12月の在沖米軍基地における新型コロナウイルスの集団感染は、県内にオミクロン株の市中感染が広がる大きな要因となったと考えていることから、検疫について国内法を適用するなど、日米地位協定を抜本的に見直すことなどを求めてまいります。

 さらに、沖縄の歴史的、地理的特性を活かしてアジア太平洋地域の緊張緩和と信頼醸成を図るための新たな取り組みを進めるとともに、在沖米軍基地問題のより広い国民的理解を促すため、県内外への情報発信を強化していきます。県土構造の再編につながる戦略的な跡地利用を推進します。

 「沖縄らしい優しい社会の構築―生活分野」については、子どもの貧困対策として「県子どもの貧困対策推進基金」を積み増しして60億円とし、中学校卒業までのこども医療費助成拡充を確実に実施できるよう市町村に対し支援を行うとともに、困難を抱える世帯に対して個々の家庭の事情に寄り添った支援に取り組んでまいります。

 中高生のバス通学無料化については、引き続き住民税所得割非課税世帯などの無料化に取り組むとともに、フリースクールへの通学支援にも取り組んでまいります。

 「琉球歴史文化の日」を中心に、県民が沖縄の文化と歴史への理解を深めるための施策を推進します。

 公立沖縄北部医療センターの早期整備に向けて、基本設計および設置主体となる一部事務組合の設置準備などに取り組むとともに、23年度に県立名護高等学校附属桜中学校を開校し、北部地域の医療および教育環境のさらなる充実に取り組んでまいります。

 離島振興なくして沖縄の振興なしという考えの下、「新たな離島振興計画」に基づき、「持続可能な離島コミュニティーの形成」、「次代を拓くフロンティア施策の展開」を基本方向とし、社会・経済・環境が調和する持続可能な海洋島しょ圏の形成に向け、取り組んでまいります。

 22年度の県政運営の「重点テーマ」としては「新型コロナウイルス感染症の克服と県経済の回復」「復帰50年のあゆみと沖縄の未来と希望の発信」「DXとイノベーション等による稼ぐ力の強化」などの6項目を掲げ、沖縄振興を力強く推進する施策に取り組んでまいります。

 SDGsについて全庁的に推進し、全県的にSDGsを推進する「SDGsアクションプラン」の策定、官民と各団体の連携などを促進するプラットフォームの創設に取り組みます。

 22年度は、首里城正殿の復元工事の着工が予定されており、一つの節目を迎えます。首里城復興基本計画に基づく取り組みを推進するため「首里城復興課(仮称)」を設置し、安全性の高い施設管理体制の構築や城郭の修復など景観の保全を図り、国内外から寄せられた寄付金を活用し木材や赤瓦の調達、扁額(へんがく)などの製作に取り組みます。

 国・那覇市・地域との連携の下、「新・首里杜構想」による歴史まちづくりや、新たな基金を設置し、伝統技術を担う人材育成などに取り組んでいきます。

 ■内閣府予算案および税制改正

 22年度内閣府沖縄振興予算案では21年度補正予算に計上された公共事業関係費などを含めると、約2900億円が確保されました。税制改正では県と経済界が要望してきた沖縄関係13税制の延長と特例措置の拡充、沖縄振興開発金融公庫の存続については、おおむね認められました。沖縄振興予算、税制および政策金融を積極的に活用し、新時代沖縄を展望しうる、沖縄の振興・発展に全力で取り組んでまいります。

 第1 「経済分野」に関して―新時代沖縄の到来の視点―

 21年12月に改訂した「新型コロナウイルス対策に係る県の経済対策基本方針」に基づき、県内事業者の事業継続や雇用の維持などの支援に取り組みます。まずは域内の観光需要に対応した取り組みを進め、段階的に域外への需要喚起策など経済活動の回復に向けた取り組みを展開します。

 コロナ収束後を見据えた成長期出口戦略としては、新しい生活様式に対応した業態転換の支援とDX推進による稼ぐ力の強化などを推進し、県内企業の成長を図ってまいります。

 その成果が労働者に分配され、給与の上昇につながり、未来への投資が生み出されるサイクルの創出により、持続可能な社会経済の成長を促進します。

 ■自立型経済発展資源の創出

 アジアの活力を取り込むためのビジネス・ネットワークの連携強化に取り組むとともに、リゾテックおきなわの推進により各産業のDXを促進します。人材投資などによる企業の「稼ぐ力」の向上に向け、マネジメント人材育成、奨学金返還などに対する支援に取り組みます。

 ■社会資本・産業基盤の整備

 那覇空港については、国や関係機関と連携し、利便性の向上、機能強化と拡充に取り組みます。那覇港については臨港道路やクルーズバース、船舶の大型化に対応する施設などの整備を推進し、航路の拡充や港湾施設の高度化、集貨・創貨の促進に取り組みます。

 中城湾港は、産業支援港湾として新港地区の機能強化・拡充、泡瀬地区におけるスポーツコンベンション拠点の形成、西原与那原地区におけるスーパーヨットなどの受け入れ環境の構築に向けて取り組みます。

 沖縄都市モノレールについては、引き続き3両編成化を推進します。幹線道路網は国が実施する那覇空港自動車道などの整備を促進するとともに、南部東道路などの整備を推進します。

 ■沖縄らしい観光リゾート地の形成

 持続可能な観光地の形成について、地域社会、経済、環境の三つの側面において適切なバランスを長期的に維持し、各地域社会が受忍できる一定の量を求めながら、県民の幸福度や観光客の満足度など質の向上を目指します。

 アフターコロナを見据え、国内外において戦略的なプロモーション活動を展開し、富裕層など消費単価の高い層の取り込みを図ります。情報通信技術を活用した調査分析手法を導入するとともに、滞在日数の延伸や来訪時期の平準化などにつながる沖縄型ワーケーションを促進するプロモーションに取り組みます。

 FIBAバスケットボールワールドカップ2023の開催について関係市町村と連携して支援体制を構築し、機運醸成に取り組みます。スポーツツーリズムの推進は、プロスポーツとの連携を促進し、J1規格スタジアムの整備に向けた検討を進めてまいります。

 ■産業の振興と雇用の創出・安定

 産業DXのけん引役として高度化を図り、産学官連携で官民データのオープン化や利活用のための基盤構築に取り組みます。観光消費や県産品の需要拡大につながる産業横断的なブランド戦略を策定し、稼ぐ力の強化を図ります。

 県産品の輸出促進に向けて、旅客便貨物スペースを活用した航空物流ネットワークの形成や越境ECの活用促進による販路構築などに取り組み、コロナ対策を徹底して「沖縄大交易会」「離島フェア」を開催します。

 海外事務所の機能強化など支援機能を充実させ、県内企業などの海外で「稼ぐ力」の向上に取り組みます。国際物流拠点産業集積地域制度などを活用して企業の誘致、航空関連産業クラスターの形成に取り組むなど、臨空・臨港型産業の集積を促進します。

 ものづくり産業について、付加価値の高い製品開発や基盤技術の高度化、生産性向上など、県内発注の促進や域内の経済循環を高める取り組みを推進し、県内企業への先端技術導入を促進してまいります。

 県内大学、関係機関が連携したエコシステムの構築を促進します。本県の地域特性や生物資源などの優位性を活かした医薬品や機能性食品、再生医療などの研究開発と事業化促進に取り組みます。

 中小企業・小規模事業者への総合的な支援を推進します。商工会・商工会議所などの支援体制を強化し、地域産業を支える団体を支援します。

 低炭素で災害に強い沖縄らしい島しょ型エネルギー社会の実現を目指します。

 多様な人材の活躍や柔軟な働き方の促進に向けて女性、高齢者、障害者ら個々のニーズに応じたきめ細かな支援やテレワークの普及促進、若年者の県内就職促進などに取り組みます。ワーク・ライフ・バランスの推進や非正規雇用労働者の待遇改善、正規雇用の拡大、女性の就業継続、企業などが従業員に必要なスキルを習得させるリスキリングの促進に取り組みます。

 ■農林水産業の振興

 本県の特性を最大限に生かした農林水産業を展開するとともに、離島・過疎地域における基幹産業としての地位も踏まえつつ、魅力と活力のある持続可能な農林水産業を目指します。

 ブランド化に向け、戦略品目の拠点産地形成、スマート農林水産技術の研究開発の推進、生産基盤の整備に取り組みます。流通の合理化に向けた取り組みを推進するとともに、中央卸売市場の再整備に係る調査に取り組みます。

 農地利用の拡大、新規就農者の支援や沖縄県立農業大学校の移転整備に向けた取り組みを引き続き推進します。軽石について海水こし器の設置や漁船の燃料費の補助など、水産業への支援に努めてまいります。

 パラオ共和国の排他的経済水域(EEZ)における本県まぐろはえ縄漁船の安定的な操業継続に向けてMOU締結を進めます。貿易自由化への対応として対策予算を措置し、農林水産業の体質強化対策や経営安定対策に取り組みます。

 第2 「平和分野」に関して―誇りある豊かさの視点―
 ■国際交流・協力の推進

 ウチナーネットワークコンシェルジュの拡充強化を図ります。ネットワークを活かし、将来の国際協力を担う人材の育成を推進します。「国際災害救援センター(仮称)」で台風対策などに関する本県の知見や気象情報の活用に必要な情報収集に取り組みます。

 中国福建省との友好県省締結25周年の節目の年に友好親善を深める機会を創出し、アジア諸国との観光・文化交流を促進するフォーラムを開催します。

 ■基地問題などの解決と駐留軍用地の跡地利用

 在沖米軍基地のさらなる整理・縮小を日米両政府に求めるとともに、両政府に県を加えた三者で協議を行う場「SACWO(サコワ)」を設けることを要請してまいります。沖縄近海の広大な訓練水域・空域の大幅な削減を求めてまいります。訓練の県外・国外への分散移転、ローテーションを求めてまいります。

 普天間飛行場については、普天間飛行場負担軽減推進会議などで負担軽減に取り組むよう求めてまいります。固定化は絶対に許されないことから、県内移設の断念やオスプレイの配備計画の撤回を求める建白書の精神に基づき、同飛行場の早期閉鎖・返還を日米両政府に求めてまいります。

 辺野古新基地建設問題については、トークキャラバンなどを通じ、辺野古新基地建設に反対する県民世論や私の考えを広く国内外に伝え、問題解決に向けた国民的議論を喚起し、理解と協力を促してまいります。

 県の処分に対し、国は、本来国民の権利利益の救済を図ることを目的とする行政不服審査法に基づく審査請求をしましたが、地方自治の保障の観点から問題であり、全国知事会と連携し政府に制度の見直しを強く求めてまいります。

 米国政府に対しても沖縄県自らが直接訴えることが重要だと考えております。引き続きワシントン駐在を活用し、米国内での情報収集、復帰50年の機会を捉えた情報発信、有識者と連携した会議の開催および連邦議会関係者への働きかけなどに取り組んでまいります。私が直接、実情を訴えることも重要であると考えており、コロナの状況を踏まえつつ、訪米やオンラインツールなどさまざまな手法で取り組んでいきます。

 コロナ対策に関し、在日米軍が日本側の措置とは整合的でない運用をしていたことが明らかになったことについては、日米地位協定がもたらす構造的な問題があると考えます。日米地位協定の抜本的見直しの実現に向けて、全国知事会や渉外知事会などと連携し、全国への情報発信など取り組みを強化してまいります。

 尖閣諸島を巡る問題では、中国公船が接続水域の航行や領海侵入を繰り返していることを踏まえ、関係機関と連携を図り正確な情報収集に努めるとともに、日本政府に同諸島周辺海域の安全確保を図ること、冷静かつ平和的な外交・対話で中国との関係改善などを求めてまいります。

 返還予定地について関係市町村と連携を図り、跡地利用計画の策定を促進します。戦後処理問題では、不発弾処理の早期解決に取り組み、沖縄戦戦没者の遺骨収集の加速化を図ります。所有者不明土地問題については、早期に抜本的解決が図られるよう法制上の措置や財政措置などを国に求めてまいります。

 ■沖縄から世界へ、平和の発信

 沖縄平和賞とちゅらうちなー草の根平和貢献賞などの取り組みを推進し、平和の礎や平和祈念資料館における証言映像の収録・展示、学芸員育成や調査研究の充実を図ります。

 第3 「生活分野」に関して―沖縄らしい優しい社会の構築の視点―
 ■医療の充実・健康福祉社会の実現

 新型コロナ感染拡大防止に向け「感染症総務課」「感染症医療確保課」「ワクチン・検査推進課」(いずれも仮称)に再編し、エッセンシャルワーカーへのPCR検査強化など体制を充実し、保健所体制強化や医療機関への支援など医療提供体制の強化、那覇空港・本土と直行便就航の離島空港での水際対策の強化に取り組みます。

 県立病院は医療フェーズに応じたコロナ病床確保など、コロナとコロナ以外の医療の両立に努めます。ワクチン接種は国や医師会などの関係機関と連携して市町村を支援し、県の広域ワクチン接種センターで追加接種など、積極的に推進してまいります。

 北部、離島地域の医師不足・診療科偏在の解消などに取り組みます。薬剤師確保は、県内薬学部設置の早期実現に向け県の基本方針の策定に取り組みます。県立看護大学は4月1日の公立大学法人化に向け、移行作業を進めてまいります。

 「健康・長寿おきなわ」の復活を目指し、県民意識の醸成、「健康経営」推進や歯科口腔保健対策に取り組みます。障害のある人への理解を深める取り組みの推進、発達障害者や医療的ケア児らに対する地域支援体制の整備など、障害者の地域生活支援に取り組んでまいります。

 ■子育て・高齢者施策の推進

 こどもの最善の利益を考え、こどもがひとしく健やかに成長できる社会の実現を目指し、国の「こども家庭庁」創設に対応できる体制構築に向け、県の組織編成に取り組みます。

 待機児童が生じないよう、保育士の労働環境の改善・潜在保育士の復職支援など、認可外保育施設を含めた幼児教育・保育の質の向上に取り組みます。市町村と連携し、地域子育て支援拠点や延長保育、病児・病後児保育、預かり保育、医療的ケア児の受け入れなどのきめ細かな子育てサービスの提供体制整備に取り組みます。

 公的施設での放課後児童クラブ整備促進などで、クラブの環境改善や保護者負担軽減に取り組みます。母子健康包括支援センターの設置促進など母子保健、子育て支援を推進し、養育費取得に資する取り組みを強化するなど、ひとり親家庭などの支援を推進します。

 若年妊婦などの支援のため、相談員を配置し、SNSなどを活用した相談や、産婦人科への同行支援などに取り組んでまいります。ヤングケアラーは実態把握と早期発見に努め、適切な支援につなげる市町村などとの連携強化に取り組みます。児童相談所の体制強化を図り、虐待を受けた子どもの相談が容易にできる環境を整備するなど、児童虐待の防止に取り組みます。

 地域包括ケアシステムを推進し、認知症対策や介護人材確保対策、特別養護老人ホームなどの整備支援などに取り組みます。女性があらゆる分野で力を発揮できるよう「てぃるる塾」を開講するなど、ジェンダー平等や女性のキャリア形成促進に積極的に取り組んでまいります。

 新型コロナ感染拡大の影響などにより生活再建の支援を必要とする方々や生活困窮者に対し、就労や家計などに対する包括的な支援に取り組みます。

 ■地域力の向上・くらしの向上

 民生委員・児童委員の一斉改選で担い手を確保し、福祉サービスが利用できる体制構築を推進します。離島過疎地域を含む県全体で人口の維持・増加のため、移住相談会や体験ツアー開催など、UJIターン促進・支援を行います。

 ■世界に誇る沖縄の自然環境を守る

 国のカーボンニュートラルの取り組みを踏まえ、第2次県地球温暖化対策実行計画で温室効果ガス削減目標を引き上げ、地球温暖化対策を実施します。「県クリーンエネルギー・イニシアティブ」に基づき、再生可能エネルギー導入拡大を積極的に推進します。

 世界自然遺産登録地の「沖縄島北部および西表島」の豊かな自然環境と生物多様性を保全し、持続可能な地域づくりを推進し、国立自然史博物館の県内誘致に向け、取り組みを強化してまいります。

 「県希少野生動植物保護条例」に基づく希少種保護を図り、外来種対策を強化してまいります。犬猫殺処分ゼロから廃止に向け、譲渡拠点施設を本格運用します。「県自然環境再生指針」を踏まえ、再生事業に関する市町村支援や全島緑化を推進します。

 北部地域の水源の維持や環境保全などをし、やんばるの森・いのちの水を守る取り組みを推進します。「県赤土等流出防止対策基本計画」を改定し、赤土流出対策を強化します。

 海岸漂着物の回収・処理、マイクロプラスチックの調査等に取り組み、使い捨てプラスチック使用の削減、循環的利用の促進に取り組みます。県食品ロス削減推進計画に基づき食品ロスの削減を推進します。

 ■歴史と誇りある伝統文化の継承と発展

 「しまくとぅば」のアーカイブ化、伝統的な食文化の普及・文化の担い手育成等、文化継承の取り組みを推進し、沖縄音楽コンサートの開催や県立博物館・美術館での各種特別展・企画展開催に取り組みます。

 第2期沖縄空手振興ビジョンロードマップ策定に取り組み、指導者・後継者育成、空手専用ガイド養成、沖縄空手会館を拠点とした「空手発祥の地・沖縄」の発信、第2回沖縄空手世界大会・第1回沖縄空手少年少女世界大会の開催などに加え、空手のユネスコ無形文化遺産の登録に向けた取り組みを推進します。

 ■安心・安全で快適な社会づくり
 

 新たに策定する「県総合交通体系基本計画」で、地域の多様な輸送資源を活用し、基幹バスシステム導入や交通結節点の整備促進など、シームレスな交通体系の構築に取り組みます。

 県営高原団地、赤道団地、平良北団地などの建て替え推進、省エネ化やバリアフリー化を促進し、高齢者ら住宅確保要配慮者の入居支援に取り組みます。県営住宅で連帯保証人を22年度から廃止し、低額所得者などの入居希望者の負担軽減を図ります。

 無電柱化の推進、道路施設・海岸堤防などの予防的な補修・補強や計画的な更新、民間施設などの耐震化などを推進します。

 治水・浸水、土砂災害、高潮などの対策や、森林の維持・造成、山地災害の予防・復旧を図ります。水道施設の計画的な更新や耐震化を推進するとともに、持続可能な下水道施設の広域化・共同化、施設の増強・更新・耐震化や市街地の浸水対策に取り組みます。

 「ちゅらうちなー安全なまちづくり条例」に基づき体感治安を改善させる抑止対策、少年の非行防止・保護対策、適正飲酒の働きかけ継続など「ちゅらさん運動」を深化させます。

 「県犯罪被害者等支援条例(仮称)」の制定に向けて取り組みます。「県水難事故の防止および遊泳者等の安全の確保等に関する条例」に基づく水難事故防止対策の推進など、安全・安心に暮らせる地域づくりに取り組みます。

 交通ルールの順守とマナーの向上、飲酒運転根絶の取り組みを推進します。サイバー空間での脅威や薬物犯罪、暴力団・準暴力団等による組織犯罪などに的確に対処し、DVやストーカー、性犯罪等の被害未然防止対策を強化します。

 消費者被害の未然防止と早期救済の市町村相談体制の充実や消費者への啓発などに取り組み、成年年齢引き下げに対応した消費者教育に取り組みます。

 ■離島力の向上

 離島診療所への医師派遣や専門医の巡回診療などによる医療提供体制の確保、離島患者の経済的負担の軽減などに取り組むとともに、離島の新型コロナ感染症対策について離島空港での検査体制の拡充、入院病床・宿泊療養施設確保などに取り組みます。

 離島航路・航空路の交通コストや生活コストの低減、離島からの高校進学等に対する支援、港湾の機能向上などに取り組み、本島周辺離島8村への水道水の安定供給と料金低減などを図るため、引き続き水道広域化に取り組みます。DXの基盤となる次世代の情報通信基盤の構築に向けて、先島・久米島地域の海底光ケーブル通信設備の機能強化や、南大東島と北大東島を結ぶ海底光ケーブルの敷設に取り組みます。

 農林水産業の生産性向上、担い手の育成、製糖業の経営安定、販路拡大、6次産業化などを推進し、域内循環の拡大に向け取り組んでまいります。

 肉用牛生産の活性化に向け、飼料生産基盤や畜舎等の整備を推進し、かんがい施設等の農業生産基盤の整備に取り組みます。下地島空港等の離島空港を活用した、航空・宇宙関連産業の展開を推進します。離島における廃棄物の適正処理対策について課題解決に取り組みます。

 オンラインの活用も含めた交流促進や観光振興など離島・島しょ地域の活性化を図るとともに、テレワーク活用を促進します。

 港湾などの耐震化やヘリの発着場所の確保、自主防災組織の整備、地区防災計画の策定、避難訓練の徹底など、島内の防災体制整備などを促進します。

 ■教育振興

 授業・学校改善を推進し、ICTを活用した教育環境整備など学習活動の充実を図ります。生徒指導の充実のため、正規教員率の改善に取り組み、教職員が児童生徒と向き合う時間を十分確保するため、働き方改革の取り組みを推進してまいります。

 県立高校で「多様な学びの在り方研究モデル校」を指定し、学習支援員を配置するなど生徒個々の学びの状態に応じた教育の充実を図ります。子どもの人権を尊重し、暴力・暴言・ハラスメントの根絶に向け、昨年12月に策定した部活動等の在り方に関する方針(改訂版)の周知徹底に努め、望ましい部活動指導の実現を図ります。

 県立真和志高の「ゆい教室」での取り組みの検証など、沖縄らしいインクルーシブ教育システムの構築に向け取り組んでまいります。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用・校内自立支援室の設置等により、いじめや不登校等の未然防止、早期対応に取り組むとともに、薬物乱用防止教育の強化に努めます。

 海外研修への高校生派遣など、グローバル人材の育成に引き続き取り組みます。那覇みらい支援学校の22年4月の開校に向けて取り組むとともに、中部地区においては過密化解消に向け、新たな特別支援学校の設置に取り組みます。

 私立学校を支援し、私学教育の充実、多様な人材の育成に取り組みます。給付型奨学金の実施など、大学進学を支援し、大学や専門学校等に進学の意欲がある所得が低い世帯の学生に対し、国と連携し、支援に取り組んでまいります。

 就学援助制度の充実促進、就学支援金支給など、教育費負担の軽減に取り組みます。家庭教育支援チームの設置促進、地域住民等の参画による学習支援や放課後の安全・安心な居場所づくりに取り組みます。

 「知の拠点」施設として県立図書館の機能充実、離島等の図書館未設置町村における移動図書館等の実施に取り組みます。玉城青少年の家については、22年度の利用開始に向けて引き続き取り組みます。