緑肥と石灰岩でサトウキビの安定多収 宮丸氏に技術賞 日本土壌肥料学会


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農業技術の開発・研究に関する受賞を報告する県農業研究センターの宮丸直子氏(左から3人目)、玉城磨氏(同2人目)と広瀬直人氏(同4人目)=15日、県庁農林水産部長室

 沖縄県農林水産部は15日、県農業研究センター土壌環境班の宮丸直子上席主任研究員が、第26回日本土壌肥料学会技術賞を受賞したと報告した。研究開発・普及啓発に顕著な業績を上げた研究者に授与される賞で、県内では初めての受賞。サトウキビの安定多収への取り組みに関する業績が評価された。

 宮丸氏は離島など堆肥の安定供給が困難な地域を想定し、緑肥による栽培を模索した。試験の結果、緑肥に堆肥と同等の土壌改良効果があると明らかにし、緑肥の栽培により休閑期の赤土流出抑制につなげた。

 県内の酸性土壌を中和させるため、従来の炭酸カルシウムに代わる素材として県内の石灰岩を使った低コストで増収が見込める技術も開発した。サトウキビの低収地域であった北大東島の土壌改善につながり、収量は以前の千平方メートル当たり3・4トンから現在は6・5トンとほぼ倍増に至った。

 県庁で受賞を報告した宮丸氏は「北大東の取り組みを県全体に広げ、沖縄の地力を上げていくのが目標だ。化学肥料の削減などにも取り組みたい」と話した。

 県農水部は同センター農業システム開発班の玉城磨(まろ)上席研究員が県発明協会会長賞(共同受賞)、元同班で現在は県工業技術センター食品・醸造班の広瀬直人上席主任研究員が2021年度日本食品保蔵科学会賞をそれぞれ受賞したことも併せて報告した。

 玉城氏は沖阪産業(那覇市)と園芸施設の防風カーテン装置を共同開発した。果樹生産者を中心に普及が進み、県産マンゴーなどの商品化率向上につなげている。広瀬氏は熱帯・亜熱帯産農産物の加工利用や鮮度保持に関する研究に従事。シークヮーサーの搾りかすを原料としたポン酢の製品化や、輸送中にマンゴーの表面が黒くなる「炭疽(たんそ)病」の防除方法の開発に貢献した。
 (小波津智也、写真も)