那覇軍港訓練、浦添移設の前提条件崩れる 制限なき拡大の恐れ 米大佐「理想的」発言【記者解説】


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飛来した米軍のCH53E大型輸送ヘリに乗り込む武装した米兵=12日午前11時3分、那覇軍港(ジャン松元撮影)

 在沖海兵隊政務外交部長のニール・オーウェンズ大佐は16日、航空機と船舶を使う「人道支援訓練」に「那覇港湾施設(那覇軍港)は理想的な場所だ」と発言した。今後も必要だと判断すれば県や那覇市の反対を押し切って使用する可能性を示唆した格好で、地元の意向に向き合わず、訓練の都合を最優先する姿勢が改めて露呈した。

 一連の訓練で、米軍の判断次第では那覇軍港の使用が制限なく拡大される懸念が高まった形だ。日本政府も「港湾施設の使用主目的に沿ったものだ」として、訓練の実施を追認している。

面談後、報道陣の取材に応じる県の溜政仁基地対策統括監=16日午前、北中城村のキャンプ瑞慶覧第1ゲート前

 そもそも那覇軍港の運用について、県は航空機の離着陸や訓練が想定されていないとの認識を示している。その上で、県は現有機能を維持する前提で、浦添市への移設を容認してきた。今後も訓練が実施される可能性が出てきたことで、県が移設を容認する前提は崩れている。

 米軍が自由に使用目的を広げられる状況で、軍港移設が進めば「基地負担の新たな形」(玉城デニー知事)ごと、浦添市に移設することになる。県には軍港移設を認める前提が崩れている現状を示しつつ、日本政府や米軍に対して、訓練が繰り返されないよう使用条件の規定や順守する担保を迫るなど、具体的な交渉を進める必要性も出ている。
 (明真南斗)