消防庁舎跡地めぐり名護市長を提訴 住民ら15人「決議経ず親族役員の子会社へ売却」


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那覇地方裁判所(資料写真)

 沖縄県名護市の消防庁舎等跡地売却を巡り、市民15人が18日、渡具知武豊市長と売買契約を結んだ大手住宅メーカーの共同企業体(JV)などに対し、市に損失を与えたとして1億3268万円を支払うよう求める住民訴訟を那覇地裁に提起した。住民側は市長とJVが市議会の決議を経ず、市長の親族が役員を務める会社の子会社に土地を売却したことが違法な財務会計行為に当たるとしている。

 訴状によると、2019年の市の公募型プロポーザルで、大手住宅メーカーなどでつくるJVが提出した事業スキーム説明書には、渡具知市長の親族が役員を務める会社の子会社が事業運営すると記載されていた。

 19年7月の市議会に提出された土地売買の議案では子会社の名前が消され、土地・建物の所有は「名護市を所在とする新設法人」となっており賛成多数で可決された。同年9月、市とJVなどが子会社に売買契約の権利を継承する協議を経て、土地の所有権が子会社に移された。

 訴状では、議会の承認を経ずに子会社に土地が売却された以上、市長は土地の返還義務を負っており、返還請求しないことは違法だとしている。公募型プロポーザルで落選した別の不動産業者は、契約したJVより約1億3千万円高い価格を提示していたため、市に差額分の損失が生じたとしている。

 提訴後の会見で、名護住民訴訟の会共同代表の宮城聡さんは「渡具知市長は、市民の前に出て説明してもらいたい。その義務がある」と訴えた。

 渡具知市長は「訴状を見ていないのでコメントできない」と話した。

 市長に返還勧告を求める住民監査請求は1月19日に却下(不受理)された。

 (中村万里子)