那覇軍港訓練、移設に影響も 容認の前提「現有機能」変化、浦添市長コメントせず


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港湾敷地に着陸したオスプレイから降り、銃を持って周囲を警戒する米兵=9日午後3時ごろ、那覇市の米軍那覇港湾施設(喜瀨守昭撮影)

 在沖米海兵隊が8~13日に那覇港湾施設(那覇軍港)で訓練を実施した。遊休化が指摘されてきた那覇軍港は返還が決まっているが、返還の条件として那覇港浦添ふ頭での代替施設の建設が計画されている。軍港移設が進めば、浦添市沖で同種の訓練が実施される恐れもある。国と県、那覇、浦添両市は「現有機能の移転」という位置付けで移設に向けた議論をしてきた。米軍機の飛来や訓練の実施を日本政府も認め、米軍が実施を繰り返す可能性を示唆している以上、移設議論の前提にも影響を与える可能性がある。

 玉城デニー知事は18日の定例会見で、那覇軍港内で航空機の離着陸や訓練が可能だとする政府の見解に対し、「県民に新たな基地負担を強いる。従来行われてこなかった運用で基地負担を増大させることは、断じて認められない」と指摘。県として軍港への航空機の飛来は、港湾の機能に沿わない目的外使用という立場をとっている。

 一方、玉城知事は日米両政府が計画する軍港の浦添移設について容認してきた。会見では今回の訓練を受けて移設計画に対する姿勢を変えるかどうかを問われたが、「まだ議論していない」と述べるにとどめた。

 県幹部によると、那覇軍港の浦添移設計画について国と話し合う移設協議会で、移設後の軍港利用に関して政府側の認識を確認する構えだ。

 また、玉城知事は那覇軍港の使用状況の低さに触れ、浦添での代替施設完成前の先行返還について政府に求めていた。

 ただ、米軍が那覇軍港を使って新たな訓練を実施した背景として、中国を想定した南西諸島での訓練活発化があると推測される。識者からは「那覇軍港は、台湾有事に伴う米軍作戦でも補給拠点としての重要度は増すとみられる。県が求める先行返還も難しくなる可能性がある」(野添文彬沖国大准教授)と返還作業にも影響が出てくるとの見方が出てきている。

 那覇市は県と同様に那覇軍港への米軍機飛来の中止を訴えてきた。そうした対応の中、城間幹子市長は15日の市議会2月定例会代表質問で、那覇軍港の浦添移設を容認する立場について「堅持する」と改めて述べた。

 那覇市として、浦添市に建設予定の代替施設について「今後の協議の中で(那覇軍港の使用主目的を『港湾施設および貯油所』と定めた)5・15メモの厳格な運用を強く求めていきたい」(仲本達彦市総務部長)との見解も示している。

 一方、軍港移設を受け入れる立場の浦添市の松本哲治市長は9日、那覇軍港での訓練について「コメントをする立場にない」と話し、訓練に抗議する那覇市や県とは距離を置いている。浦添移設後に同様の訓練が起こりうることについても回答を避けた。 
 (明真南斗、伊佐尚記)