【記者解説】石垣市長選 コロナ対策に支持を得た中山氏 「オール沖縄」は打開策見えず


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当選の弁を述べる中山義隆氏=27日午後9時56分、石垣市浜崎町の選挙事務所(ジャン松元撮影)

 【石垣】27日に投開票された石垣市長選は、自民、公明の推薦する中山義隆氏(54)が4選を果たした。来年度は陸上自衛隊駐屯地の開設が予定されるなど、石垣の将来を左右する重要な任期を迎える。自民は1月の名護、南城市長選に続く勝利によって知事選の県政奪還に勢いをつけ、玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢は打開策の見えない状況が続く。

 石垣市長選は、現職の中山義隆氏が4選を果たした。「長期市政のひずみが出てきた」として離れた支持者たちもいたが、それでも勝利を収めた背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大により落ち込んだ市経済の回復を求める市民の切実な声が追い風となったことがある。一方、複雑化する安全保障環境が今後の市政運営に影を落としてくる可能性がある。

 中山氏は2年以上にわたる新型コロナ対策で、他自治体に先駆けた政策を打ち出すなど率先して決断力を示してきた。離島は医療資源を逼迫(ひっぱく)させないための迅速な判断が特に求められ、選挙戦ではコロナ禍で疲弊した市経済の回復を前面に掲げた。4期目の当選は、引き続きコロナ対応の先頭に立つことに市民の信任が得られたといえる。

 一方、与党市議だった砥板芳行氏が対立候補に名乗りを上げて獲得した票は、多選批判の声が一定程度あることを示す結果となった。幅広く市民意見を受け入れる姿勢が求められる。

 市政刷新を訴えた砥板氏だが、中山氏の側近として石垣島への陸上自衛隊配備を積極的に推進してきたこれまでの経緯などもあり、対立軸は見えづらかった。陸自配備計画の賛否を問う住民投票などの争点は、コロナ対応などに埋没した形だ。議論が深まらなかったとはいえ、陸自駐屯地は2022年度に開設する予定だ。台湾有事をにらんだ日米共同作戦計画が南西諸島で進み、尖閣諸島を巡る日中間の緊張の高まりもある。安保政策や国際情勢が島の将来を左右する局面が一層想定され、市民の生命、財産を預かる市長としてかじ取りは重要性を増している。
 (西銘研志郎)