3万部売れれば「成功」と言われるビジネス実用書で、異例の発行部数100万部を突破した「人は話し方が9割」(永松茂久著、すばる舎)。その大ヒット本を編集者として手掛けた。「特に20代前半の若い人が読んでくれている。今の時代にあった書籍ができた」と頬を緩める。
幼い頃から、本や漫画を読むのが好きだった。学校の図書館で本を借りる度に押してもらえるスタンプがたまっていくのも、うれしかった。「本は自分の知らない世界を教えてくれた。相談相手でもあり、本が友達だった」と語る。
野球のイチローさんやサッカーの中田英寿さんら一流のスポーツ選手にも憧れた。「プレーヤーは無理でも、感動の裏側を伝えることは自分にもできるのでは」と、スポーツライターになる夢を膨らませていった。だが、就職活動でマスコミ業界からの内定は一社ももらえなかった。大学卒業後、アルバイトでサッカー雑誌などで仕事した。
バイト生活を続ける中、27歳の時に転機が訪れた。スポーツライターになるにはマスコミ業界にまずは就職した方がいいとアドバイスされ、現在の会社「すばる舎」に入社した。編集部に配属され、企業とタイアップした書籍を手掛けるようになった。仕事は面白く、のめり込んでいった。
「人は話し方―」の著者、永松さんとは同僚を通して知った。若者から高齢者まで彼に会うと、彼のファンになってしまう。そんな魅力的な人だった。「人に好かれるこつを、みんな知りたいのではないか」。同僚とともに、本のコンセプトづくりなどに奔走し、半年という短い期間で出版にこぎ着けた。
本の作り手になった今、「著者の魅力を引き出して伝える、世間との橋渡しをするのが出版社の仕事だ」と穏やかな口調で語った。
(問山栄恵)
うえず・やすなり 1979年生まれ、うるま市出身。球陽高、早稲田大卒。2007年にすばる舎入社。手掛けた「人は話し方が9割」が同社創業以来初の100万部突破。20年から編集部次長。