聞こえなくても「自分を生かす」 元JAXA職員、世界一周…ろう者・春日さんが歩んだ人生


この記事を書いた人 Avatar photo 山城 祐樹
生まれつき耳が聞こえない自身の人生や、元JAXA職員として宇宙について講演する春日晴樹さん=2月27日、糸満市の西崎総合体育館

 【糸満】世界一周、27個の資格取得、宇宙航空研究開発機構(JAXA)元職員―。輝かしい経歴を歩む春日晴樹さん(39)=北海道=は、生まれつき耳が聞こえない。自身の人生について、全国各地で講演活動をする。2月27日は沖縄県糸満市の西崎総合体育館で「宇宙の話・私の経験」と題し講演した。琉球新報糸満センター販売店主催。約35人の市民を前に手話を交え、にこやかに言葉を紡いだ。

 春日さんは東京都出身。高校卒業後、5年間の会社勤めを経て「聞こえない母のために介護福祉士になろう」と決心。だが、入学を希望するも全国各地の専門学校で「前例がない」「耳が聞こえずどうやって授業を受けるのか」と断られ続けた。そんな中、沖縄の学校が受け入れてくれた。「前例がないならあなたが作ればいい」。熱い言葉に胸が打たれた。春日さんは「勉強は大変だったけど、学校は楽しかった」と懐かしむ。無事、介護福祉士の資格を取得した。

 その後、県内の障がい者支援施設に勤務し、世界各地を旅した。胸にはいつまでも消えない思いがあった。ろう学校時代に訪れたJAXAの種子島宇宙センター(鹿児島県)への憧れ。猛勉強の末、JAXAの採用試験を突破し3年間、広報部に勤務した。

 退職後、北海道に移住。妻と暮らしながら、聴覚障がいなどで悩む人の心をケアする活動をしている。

 「あなたならできる」「自分を信じて」。春日さんは周囲から何度も言われ続けてきた。だが、「言うのは簡単。その気持ちにたどり着くまでが難しい。聞こえないことでどれだけ自信を無くしてきたか。だって聞こえないんだもん」と世間の声に対する正直な思いを語った。

 それでも下を向いてばかりもいられない。「自分で自分を生かす」と心を奮い立たせ壁を乗り越えてきた。いま、夢がある。「誰でも仲良く暮らせる世界にしたい」
 (照屋大哲)