戦没者遺骨の保全、沖縄県が条例検討 土砂採取で懸念高まる 県議会一般質問


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沖縄県庁

 沖縄戦で激戦地となった沖縄本島南部の採掘土砂に戦没者遺骨が混入するのを防ぐため、県は3日までに、遺骨を保全する県条例の制定に向けて庁内に検討チームを発足させた。照屋義実副知事が3日、県議会2月定例会一般質問で明らかにした。照屋副知事は「開発行為に一定の規制を掛ける条例になるか、理念条例になるか、その可否についてまず検討していく」と述べた。比嘉瑞己氏(共産)への答弁。

 名護市辺野古の新基地建設事業で防衛省が土砂採取候補地に南部地域を追加しようとしており、土砂採取に伴って遺骨が混入する可能性が問題視されている。

 検討チーム発足は、市民団体などから開発行為から遺骨を保全する条例の制定を求める声が上がっているのを受けた対応。県議会にも2団体が条例制定を求める陳情を提出しており、2月定例会の文教厚生委員会で話し合われる。ただ、野党から慎重な声もあり、採択の見通しは不透明だ。

 照屋氏は答弁で、自身の祖父母も沖縄戦で犠牲となって遺骨が戻ってきていないと話し「戦後処理は済んでいない。ワーキングチームで前向きに検討していく」と語った。

 市民団体が県議会に提出した陳状は、開発に際して事前に知事への届け出を必要にすることや、糸満市摩文仁を中心にした「沖縄戦跡国定公園」の文化財指定を目指す条例の制定を求める内容となっている。一方、開発の規制を伴う条例は、私権制限の観点から法的なハードルが高いとの見方もあり、遺骨や戦跡の保護、沖縄戦の記憶継承をうたう理念型となる可能性や、議員提案が模索される可能性もある。

 遺骨が残る地域からの土砂採取を巡っては昨年、糸満市で鉱山開発計画が明らかになり、県が自然公園法に基づく措置命令を出した。業者は「県の措置命令は違法だ」として国の公害等調整委員会に裁定を申請している。
 (明真南斗)