世界初も日本初も!美ら海水族館が珍魚2種採集 フグは飼育展示にも成功


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世界で初めて生体展示されているホクロキンチャクフグ。通常時(上)と体を膨らませたとき(下)の比較写真(沖縄美ら海水族館提供)

 【本部・恩納】沖縄美ら海水族館はこのほど、本部町沖での小型無人潜水艇(ROV)調査でフグ(キタマクラ属)の一種、ホクロキンチャクフグの採集に成功し、世界初の生体展示を「深海の小さな生き物コーナー」で開始した。また、これまで国内で記録がなかったヤセムツ科ヤセムツ属のコゲメヤセムツ(新称)を恩納村沖で採集することにも成功し、日本初記録種として「魚類学雑誌」に報告した。

 ホクロキンチャクフグはハワイ諸島やベトナム沖、小笠原諸島沖合に生息していることが数例報告される。キタマクラ属では最も深い水深(60~274メートル)に生息し、腹部にあるホクロのような黒い斑紋が特徴。生態はほとんど知られておらず、飼育例のない稀種(きしゅ)。

 今年1月にROVによる調査で、本部町沖の水深216メートルの泥底付近を単独遊泳する約6センチの個体を発見し、スラープガン(吸引装置)を用いて採集した。沖縄美ら海水族館が所有する最大18メートルの水圧をかけることができる「重力式加圧水槽」を用いて減圧治療を施し、展示に成功した。

日本で初めて確認されたコゲメヤセムツ(沖縄美ら海水族館提供)

 コゲメヤセムツはインド洋西部でしか確認されていなかった稀種。3月に恩納村沖の水深410メートルから採集した。和名がなかったため、茶色や黒色の焦げた跡(焦げ目)のような模様を持つことにちなみ、新しく標準和名を提唱した。

 国立研究開発法人水産研究・教育機構開発調査センターの岡本誠氏と、沖縄美ら島財団総合研究センターの宮本圭氏が「沖縄島西から得られた日本初記録のヤセムツ科魚類 コゲメヤセムツ(新称)」として論文を「魚類学雑誌」に発表した。

 美ら海水族館は「ヤセムツ属魚類は群れで行動する種も知られているが、調査では岩礁の点在する泥底付近を単独で遊泳する様子の撮影に成功するなど、自然下での生態の一端を解明できた」としている。
 (松堂秀樹)